大和総研コラム

中国:「不可」が増えた成績表

  • 国際
  • 掲載日 : 2021年3月11日
  • 大和総研経済調査部 主席研究員 齋藤尚登

「国民経済・社会発展第14次5カ年計画と2035年の長期計画要綱 (草案) 」を読んで、第13次5カ年計画 (2016年~2020年) の成果の記述が妙にあっさりしていると感じた。貧困脱却については「5,575万人が貧困から脱却し、中華民族を数千年にわたり苦しめた絶対的貧困問題が歴史的な解決を得、人類の貧困減少史上の奇跡を創造した」と最大限の自賛をした。しかし、成果の部分はこれを含めても1ページ半程度であり、調べてみると前回5年前と比べて1ページ少なかった。過去5年間の成績一覧表が、今回はなくなっていたのである。

そこで第13次5カ年計画の成績表を作成し、第12次5カ年計画 (2011年~2015年) のそれと比較すると、「不可」が大きく増えている。第12次5カ年計画では計画を未達成だった項目は研究開発 (R&D) 投資のGDP比の1項目のみだったが、第13次5カ年計画では、少なくとも実質GDP成長率 (計画は年平均6.5%以上、実績は5.7%) 、1人当たり労働生産性 (計画12万元以上、実績11.8万元) 、GDPに占める第3次産業の割合 (計画56%、実績54.5%) 、R&D投資のGDP比 (計画2.5%、実績2.4%) 、1人当たり可処分所得実質増加率 (計画は年平均6.5%増以上、実績は5.6%) の5項目が未達成となった。計画は達成を前提として作成されるため、これほど多くの項目が未達成となるのは異例である。

当然、コロナ禍の影響は大きいがそれだけではない。米中摩擦の激化と長期化による不透明性や不確実性の増大、あるいは先進国へのキャッチアップがある程度進んだことによる成長力の低下などによって、中長期の成長率目標を設定し、それを達成することが困難になっていることもあろう。例えば、2020年の1人当たり可処分所得実質増加率は前年比2.1%増にとどまったが、目標達成には同6.6%の増加が必要であった。2019年の実績は5.8%増であり、コロナ禍がなくても目標達成は危ぶまれていたのである。第14次5カ年計画では、実質GDP成長率目標が設定されなかったことが話題となったが、既述の理由から成長率目標を設定するのが難しくなっているのであろう。

この辺りの話は大和総研レポート「中国:成長率目標を設定できない本当の理由」 (2021年3月9日) に詳しく書いたが、それとは別に、第14次5カ年計画の目標設定で筆者が残念に思っていることがある。前回はともに主要目標に採用された2つの都市化率のうち、今回は6カ月以上の常住人口の都市化率のみが採用されたことである。もうひとつの都市化率は都市戸籍を有している人口の全人口に対する比率である。2019年末時点の常住人口都市化率は60.6%、戸籍人口都市化率は44.4%であり、この差はいずれ農村に戻る出稼ぎ者ということになる。農村出身者が都市戸籍を得て都市に定住し、都市の福利厚生を享受して、新たな消費者として育っていくには、戸籍人口都市化率を高めることがより重要なのだが、主要目標から外れた。やはり残念と言わざるを得ない。


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