大和総研コラム

オンライン金融教育で資産形成を促す

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年1月6日
  • 大和総研政策調査部 研究員 佐川あぐり

個人による資産形成制度の利用促進は大きな政策課題だが、現状は確定拠出年金 (DC:Defined Contribution) や少額投資非課税制度 (NISA) などの制度利用が限定的であり、その要因として関心の低さや金融知識の不足などがある。それゆえに、国民の金融リテラシー向上へ向けた金融教育が必要とされている。

金融広報中央委員会が2005年を「金融教育元年」と位置づけて以来、政府は関係省庁や各金融機関、関連団体と連携し、金融教育の推進に取り組んできた。学校向け、一般社会人向けに、講師の派遣やセミナーの開催、関連教材の提供など、具体的な支援を行っている。

資産形成を促すには、所得を得て資産形成を実際に行う社会人を対象に金融教育を強化する必要がある。加えて、社会人になる前に金融の基礎知識を学ぶ場として、高校生や大学生に対する金融教育も充実させるべきだろう。

浅井 (2017) (※1) では、大学生を対象とした金融教育の分析において、金融への関心が低い大学生ほど、金融教育を行うと金融知識の水準が向上する傾向があるという結果を示している。大学生になると、一人暮らしを始める、クレジットカードを利用する、国民年金に加入するなどの場面があり、大学で学ぶ金融の知識は実際に役立つはずだ。その時の経験は、社会人になってからのライフプランを考える上でも活かせるだろう。

また、小・中学校や高校で金融教育を行う教員の育成という観点からは、特に大学の教職課程で金融教育を充実させることが効果的である。文部科学省の新学習指導要領 (※2) に新たに金融教育の項目が追加されるなど、教育現場では金融教育の重要性が認識されてきている。初等中等教育の段階から金融の知識を学ぶことは重要であり、指導できる教員の育成が急務である。

すでに、大学生向けの金融教育活動に力を入れる団体等はあり、例えば、日本証券業協会が全国各地の大学を対象に実施する「金融リテラシー出前講座」の実績を見ると、大学数、講義数が増加傾向にある。ただ、今般のコロナ禍で、これまでの対面式の講座やセミナーの多くがオンライン形式に変更され、大学側のシステム対応の遅れや学生側の通信環境の不整備などの理由で、対応できなくなったケースもあると思われる。今後、政策的に大学での金融教育を推進していくためには、急速なデジタル化への対応が求められる。

一方で、デジタル化が進み、オンライン形式が定着すれば、場所の制約がないため受講者数を増やせるだろう。また、オンデマンド型の動画配信の活用には、学生が好きな時間に復習できるというメリットもある。オンラインをうまく活用すれば、大学生の金融リテラシー向上を起点にした国民全体のリテラシーの底上げが期待できるのではないか。個人の資産形成制度の利用促進は、オンライン金融教育の推進がカギとなろう。


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