大和総研コラム

カバードボンドとバーゼルⅢ最終化

  • 経済
  • 掲載日 : 2020年12月16日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 鈴木利光

1年ほど前になるが、筆者は「『カバードボンド法制』の議論、再燃か -本邦金融機関初の『カバードボンド』の発行を受けて-」と題するレポートを公表した (※1) 。三井住友銀行 (SMBC) による、本邦金融機関初となるカバードボンドの発行をきっかけに、本邦におけるカバードボンド法制の議論が再燃する可能性があるのでは、という持論を示したものだ。

ここで少し、カバードボンドについておさらいしたい。「カバードボンド」とは、一般的に、金融機関が発行する担保付社債をいい、欧州では主要な資金調達手段の一つである。その大きな特徴として、「デュアルリコース」 (担保資産のみならず発行体の固有財産への償還請求可) 、「カバープール」 (質の高い担保資産の集合) の二点が挙げられる。カバードボンドのスキームには、法制に基づき発行される「法制カバードボンド」と、法制によらずストラクチャードファイナンスの手法に基づく「契約型カバードボンド」がある。本邦には、「カバードボンド」という概念を定めた法規制 (カバードボンド法制) がない。そのため、SMBC のカバードボンドは、いずれも、複雑なスキームを伴う「契約型カバードボンド」となっている。本邦でカバードボンド法制が実現していない主な理由は、「デュアルリコース」が現行法制下では認められていない点にある。

上記レポートの公表から1年、残念ながら、本邦においてカバードボンド法制の議論が「再燃」しているとはいえない。

しかし、筆者は、上記レポートで、SMBCによるカバードボンドの発行を受けて、「他の本邦金融機関においてもその発行への関心が高まっている可能性がある」とも述べた。これは、必ずしも的外れな意見ではなかったようである。というのも、SMBCに続き、三井住友信託銀行が、2020年10月、契約型カバードボンドを発行したからである。

こうした事例を見ると、今後も、SMBCの発行スキームに倣って、カバードボンドを発行する本邦金融機関が現れることが見込まれる。長引く低金利のなか、邦銀は、貸付の利鞘の大きい海外向け貸付業務に活路を見出しており、そのために必要となる外貨を低コストで安定的に調達することが喫緊の課題となっているところ、カバードボンドの発行はその課題克服にうってつけの手段といえるからである。そうした見込みとともに改めてクローズアップしておきたいのが、2023年より適用が開始される「バーゼルⅢ最終化」におけるカバードボンド保有の優遇措置である。

バーゼルⅢ最終化は、投資家としての金融機関からみたカバードボンド保有のメリットを、自己資本比率規制の面でも補強するものとなっている。現行のバーゼルⅢでは、「カバードボンド保有」というカテゴリーは存在せず、あくまでも銀行向けエクスポージャーの一種であり、そのリスクウェイトのレンジは「20%~150%」である。これに対して、バーゼルⅢ最終化では、新たに「カバードボンド保有」というカテゴリーを創設し、そのリスクウェイトのレンジを「10%~100%」と低く設定しているのである。

こうした状況を受けて、くどいようだが、筆者は、本邦におけるカバードボンド法制の議論が「再燃」する可能性が消えたわけではないと思っている。


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