大和総研コラム

選挙で疲弊した米国に必要な癒し

  • 国際
  • 掲載日 : 2020年11月18日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター 主任研究員 (NY駐在) 鳥毛拓馬

2020年11月3日の米国大統領選挙では、民主党候補者のジョー・バイデン前副大統領が約7,900万票 (※1) を獲得し、史上最多得票で当選することが確実となった。一方、トランプ大統領も約7,300万票を獲得し、「オバマの熱狂」の中で2008年にオバマ前大統領が獲得した得票数約6,900万票を上回った。これはメディアや研究者を含む多くの人々にとってサプライズであったと同時に、米国の政治的分断が明確に表れた選挙であった。

振り返ってみると、トランプ大統領が再選出馬を正式に表明し、民主党が最初の大統領候補討論会を開いた2019年6月から選挙戦は始まっていた。選挙戦が本格化したのは2020年に入ってからであるものの、1年以上にわたる長丁場であった。

長期にわたる米国の選挙戦で、人々は「選挙疲れ」になっている。2020年は新型コロナウイルスの蔓延、ロックダウン、失業者の増加、社会不安なども重なり、前回2016年の大統領選挙よりも多くの人がストレスにさらされているようだ。米国心理学会 (American Psychological Association: APA) が2020年10月に公表した調査によると、米国の成人の68%が、2020年の大統領選挙は生活における重大なストレスの原因であると回答しており、2016年の大統領選挙時の調査 (52%) から大幅に増加している。これは支持政党に関係ないとされる (民主党76%、共和党67%、無所属64%が重大なストレスの原因と回答) 。また、77%の人々が国の将来について大きな不安を感じていると回答しており、2019年の66%から増加している (※2)

こうしたストレスは、不眠や生活での集中力の欠如などの症例として現れ人々を苦しめており、ワシントンD.Cのセラピストスティーブン・ストスニー博士は、「選挙ストレス障害」 (Election stress disorder) と名付けている。ストスニー博士は、人々のストレスを特に増大させるのはネガティブな内容のニュースやソーシャルメディアであると言う。米国の多くのニュースメディアはリベラルまたは保守的な傾向があり、顕著な偏向報道もある。ソーシャルメディアにおいても、リベラルあるいは保守的な傾向にある人々が、互いを辛辣な言葉で攻撃している。スマートフォンでいつでもどこでもそういった情報に接すれば、人々の精神的ストレスは蓄積されるだろう。

バイデン氏は勝利演説で、「米国を分断ではなく団結させる。赤い州 (共和党) と青い州 (民主党) を見るのではなく、団結した州 (合衆国) を見る大統領になる」と誓った。まずは人々がお互いを傷つけあうことを止めるとともに、選挙によるストレスや国の将来への不安が癒されなければ、分断された”The divided states of America”が、団結した” The United States of Americaになるのは程遠いと思われる。


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