大和総研コラム

バイデン氏が勝利すれば米国の分断は解消に向かうのか

  • 国際
  • 掲載日 : 2020年10月14日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 橋本政彦

11月3日の米国大統領選挙まで残り1ヶ月を切った。今回の大統領選挙は例年以上に世界から注目されているが、トランプ政権下の4年弱の間に、米国社会の分断—ごく単純化すれば保守派とリベラル派の対立—が強まったことが、その背景にあろう。すなわち、今回の選挙でどちらの候補者が勝利するかによって、今後の米国の方向性は大きく異なることになる。

こうした中、民主党のバイデン氏は、従来のような「共和党 (保守) vs民主党 (リベラル) 」の構図ではなく、超党派での「トランプ大統領vs米国民」の構図を有権者に強くアピールすることで支持を拡大しようとしている。例えば、8月に行われた民主党全国大会においてケーシック・オハイオ州知事や、パウエル元国務長官などの共和党員が演説を行ったのも、そうした演出の一環と考えられる。

では、仮にバイデン氏が大統領選挙に勝利すれば、米国社会の分断は解消へと向かうのだろうか。残念ながら、その可能性は必ずしも高くないように思われる。

トランプ大統領は、就任当初の支持率が過去の大統領に比べて低かったことが指摘される一方、その後大きくは支持率が低下せず、最も低かった時期でも35% (Gallup社調査) と、歴代大統領と比べて低いわけではない。つまり、トランプ大統領のいわゆる岩盤支持層は米国民の4割弱はいるとみられ、政権交代によってこれまでのトランプ大統領による政策が大きく覆されることになれば、保守層からの反発は免れないだろう。

しかも近年、バイデン氏を擁する民主党の支持層では、所得格差の拡大などを背景に、よりリベラル色が強い急進左派への支持が若年層を中心に強まっている。2016年の大統領選挙に続き、2020年の選挙でも民主社会主義者を自認するバーニー・サンダース氏が、民主党の予備選挙において最後まで健闘したという事実が何よりの証左である。バイデン氏は、民主党の中でも中道派に位置しているものの、こうした急進左派の意見も決して無視できない状況にあり、政権交代後の政策は従来の民主党よりもリベラル色が強いものになる可能性がある。実際、バイデン氏は7月には、急進左派に配慮し民主党内の団結を強化するために、バーニー・サンダース氏と共同タスクフォースを設置し、政策提言を発表している。

振り返ると、2016年の大統領選挙における「トランプ旋風」は、バイデン氏が副大統領を務めたオバマ前政権下での8年間からの揺り戻しの結果であった。バイデン氏が次期大統領になれば、積極的に国内での意見対立を煽るような言動は控えられるとみられることから、表面的に対立は沈静化するかもしれない。しかし、それによって米国社会の分断が根本的に解決するとは考え難い。むしろ、政治サイクルに伴う米国社会の振幅はさらに拡大し、米国の先行きを考える上での大きなリスクであり続けるのではないか。


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