大和総研コラム

「国際金融都市」に向けた動きに期待すること

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2020年9月30日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 中村昌宏

ここ最近、「国際金融都市」という言葉をニュースで見聞きする機会が増えた。これまで、日本では東京が他の都市に先んじて動いてきたが、8月以降、福岡市や大阪府が国際金融都市に対する高い関心を示している。また、メディア報道によると、SBIホールディングスが大阪・神戸地区に国際金融センターを置く構想の実現に向けて、大阪府や政府との連携に動き始めたようである。

金融庁も、8月に発表した令和2事務年度の金融行政方針 (※1) の中で、「我が国において、国際金融機能の確立を目指していくことは、雇用・産業の創出や経済力向上の実現に資するのみならず、国際的にも、リスク分散を通し、アジアひいては世界の金融市場の災害リスク等に対する強靭性を高めることにつながる。」と、国際金融機能の確立に対し、積極的な姿勢を示している。

しかし、海外からの日本に対する評価は今ひとつである。9月25日、英シンクタンクのZ / Yenグループと中国総合開発研究院が発表した「第28回 国際金融センター指数」 (※2) は、国際機関等が公表する130超のデータ分析 (定量分析) と、8,500名強による金融都市としてのアンケート評価 (定性分析) から算出され、日本勢では東京が111都市中の4位 (前回3位) 、大阪が39位 (同59位) となった。特に大阪の順位の改善が目立つが、1年前の第26回では27位だったことをみれば、現状はまだ「回復途上」といえよう。また東京については、順位こそ高いものの、アンケート評価の順位が低く、また定量分析の中では税制やコスト競争力等が含まれる「事業環境」、熟練人材の有無、労働市場の柔軟性等を表す「人的資源」、金融産業集積の深度や幅、市場流動性等を表す「金融セクターの発展度」の評価が相対的に低い状況が続いている。

課題が明確である以上、取り組むべき分野も明らかである。法人税や個人所得税の税率引き下げ、英語での各種申請・手続きの利便性向上、外国人の高度金融人材の生活環境整備 (医療や子女向け教育機関) 等の整備について、今後、議論が俎上に載せられるものと思われる。

しかし、個人的には、このような国際金融都市に「必要な条件」を整備するのと並行し、海外の他の都市との差別化など「国際金融都市として強みを発揮する分野・方向性」や、「国際金融都市になることでの地域住民や日本国民のメリット」を、行政のリーダーが国内外に発信することを期待したい。「必要な条件」を整備すれば国際金融センター指数は上昇するだろうが、実際に国際金融都市として持続的に機能するには、競争相手の長所、世界のトレンド、顧客ニーズ (地域住民や日本国民が不便に感じていること等) を踏まえた上で、特色を発揮していくことが必要となろう。


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