大和総研コラム

LIBORの公表停止に備え、代替金利指標の構築が急務

  • 国際
  • 掲載日 : 2020年9月8日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 金本悠希

LIBOR (ロンドン銀行間取引金利) が2021年末以降に公表停止する可能性が高まっている中、8月7日に「日本円金利指標に関する検討委員会」が対応の目安となる時期を定めた移行計画を公表した。移行計画により、対応事項のスケジュール感が明らかになるとともに、改めて課題が浮き彫りになった。

移行計画では、2021年6月末を目安に、円LIBORを参照する新規の貸出・債券発行の停止が目指されている。そのため、今からでも、新規の変動金利の貸出・債券発行を行う場合、円LIBORに代わる金利指標を参照することが望ましい。

代替金利指標として有力なのは、日本円OIS (Overnight Index Swap) 取引市場のデータに基づいて算出される「ターム物リスク・フリー・レート」である。しかし、ターム物リスク・フリー・レートは、実際の取引で参照することができる「確定値」はまだ公表されておらず、2021年半ば頃までを目途に公表が開始される予定である (※1)

そのため、今後、ターム物リスク・フリー・レートの確定値が公表される前までに新規の変動金利の貸出・債券発行を行う場合、ターム物リスク・フリー・レートとは別の金利指標を参照する必要がある。その金利指標として市場関係者の間では、 (公表停止が見込まれている円LIBORではなく) 金利の計算期間に概ね対応する期間の無担保コール・オーバーナイト物レートを複利計算して算出する「O/N RFR複利 (後決め) 」が考えられているが、O/N RFR複利 (後決め) も具体的な算出方法はまだ検討中である。

ところで、移行計画とは別に、金融庁・日本銀行が6月に主要な金融機関の経営トップに発出したいわゆる「Dear CEOレター」でも、LIBOR公表停止に向けた対応事項のスケジュールが触れられている。それによると、金融機関は2021年初めには、「リスク・フリー・レートを参照した商品」について、原則としてシステムで取り扱えるようになることが求められている。仮に、リスク・フリー・レートを参照した商品・取引の一部がシステム対応できない場合、2020年末までに、手動で対応可能となるように事務規程・事務フローを見直すとともに、職員に対して研修等を完了することが求められている。

Dear CEOレターの「リスク・フリー・レートを参照した商品」はO/N RFR複利 (後決め) を参照した商品を想定していると思われるが、O/N RFR複利 (後決め) の具体的な算出方法はまだ検討中であり、それが確定してから2021年初めまでにシステムで取り扱い可能となるようにすることは、実際上難しいだろう。

また、LIBORのように取引開始時点で適用される金利が分かっている金利指標と異なり、O/N RFR複利 (後決め) は事後的に適用される金利が決定され、取引開始時点では不明である。そのため、O/N RFR複利 (後決め) を前提とした事務は従来とは大きく異なり、事務規程・事務フローを整備することも容易ではないだろう。

LIBORの公表停止が予想される2021年末まで1年半を切った。市場関係者が実務的な対応を進めるために、O/N RFR複利 (後決め) の具体的な算出方法を含め、前提となる制度や市場慣行が早期に確定することが求められる。

  • ※1実際の取引での参照を想定していない「参考値」は2020年5月から公表されている。

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