大和総研コラム

コロナを活かした医療提供体制の進化

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2020年7月13日
  • 大和総研政策調査部 研究員 石橋未来

新型コロナウイルスに関しては、まだわからないことが多い。なぜ感染しても重症化する人とそうでない人がいるのか、また、国によって感染状況の深刻さに違いが見られるのはなぜか、など不明な点がいくつもある。ワクチン・治療薬の開発と早期実用化はもちろん、ウイルスそのものの科学的な解明が待たれる。

未だ謎の多いウイルスだが、このウイルス対策の経験を活かして様々な検証を行い、これまで曖昧となっていた点を明らかにすることは可能である。

例えば、オンライン診療の医学的な安全性や効果はどうなのか。オンライン診療は、得られる患者の心身の状態に関する情報が、対面診療に比べて限定的だという認識があったことから、保険適用については慎重に判断されてきた。だが、今回の初診からのオンライン利用を可能とした特例的な対応を通じて、より広い範囲でのオンライン診療の活用が一定程度可能であることが示されたともいえるだろう。その中で、オンライン診療に適している疾患や、そうでない疾患などが明らかになってきたのではないだろうか。エビデンスを着実に積み上げることで、オンライン診療に適した疾患等を見極め、範囲を拡大していくことが期待される。

また、感染を恐れた人々の受療行動が大きく変化したことなどで、医療機関の経営悪化が問題になっているが、受診や通院を抑制したことで私たちの健康状態はどの程度悪化したのだろうか。諸外国と比べて日本の外来受診回数は多いが、それが疾患の早期発見・早期治療につながっているとの見方があった。緊急事態宣言下の外出自粛による受診回数の低下で、健康被害がどの程度生じているのか。それをデータに基づいて検証することは、適正受診に関する議論を進める上で極めて重要だ。

さらに、感染の拡大に伴い医療提供体制のひっ迫が大きな問題になったが、それぞれの医療機関や病床が、緊急時においてどのような役割を果たしたのかについて検証することも必要だ。例えば、今回、公立病院には優先的に重症患者を受け入れる役割が期待されていたが、実際の受け入れ状況はどうだったのだろうか。足元では、経営が厳しくなった医療機関に対して、診療報酬上の特例的な取扱いや、交付金の活用による空床確保料の補助など、様々な支援策が講じられている。もちろん、第2波、第3波への備えは大切だが、診療実績と照らし合わせた経営支援が求められるのではないか。

新型コロナウイルス感染症拡大が十分に収束する兆しが見えづらい中では、慎重にならざるを得ない面はある。だが、既に得られた数々のデータを検証して、エビデンスに基づく、より効果的で効率的な医療提供体制を構築することが望まれる。


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