大和総研コラム

ロックダウン下のニューヨーク市で鳴り響く緊急アラート、その内容は ?

  • 国際
  • 掲載日 : 2020年4月27日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター 研究員 (NY駐在) 矢作大祐

新型コロナウイルスの感染が深刻なニューヨーク (以下、NY) 市は、ロックダウンに伴い、ひっそりと静まり返っている。俯きながら買い出しに向かう人々の姿は、感染を避けるというだけでなく、日々の苦しい心情を映しているようだ。NY市を含むNY州の感染者数は4月20日時点で25万人強と米国の他の都市に比べて圧倒的に多い。しかし、元気であっても、多くの人々が仕事を失い、不安な日々を過ごしている。NY州の新規失業保険申請件数は4月11日までの4週間で120万人弱増加した。

NY州に住む人々を対象としたアンケートによると (※1) 、51%の人々が毎月の元利払いができるか不安に思っていると回答している。さらには、41%の人々が食費すら賄えないかもしれないという懸念を抱いている。現金給付が実施されたことで金銭面での不安が当面緩和されたかもしれないが、新型コロナウイルスがいつ収束するかわからない中で不安は解消されない。

人々が感染と経済的な不安におびえる中、NY市の人々のスマートフォンの緊急アラートが一斉に鳴った。緊急アラートの内容は、NY市政府からの新型コロナウイルスに関連した情報を提供するメーリングリストへの登録を要請するものであった。メーリングリストに登録すると、マスク着用やソーシャルディスタンスの重要性など様々なメッセージが毎日届く。

メッセージの中で最も目を引いたのは、食事の無料提供サービスの通知である。公立学校が閉鎖される一方で、公立学校の給食がなければ食事の機会が失われる生徒も多いことから、当初は生徒向けに朝食、昼食、一部で夕食がNY市内約400カ所の公立学校等で配布された。その後は誰でも食事を受け取ることができるよう変更された。NY市のウェブサイトでは、配布場所も検索でき、当日のメニューも確認可能だ (※2) 。SNS等では、食事を受け取る長蛇の列が話題になっている。ただし、並ぶ際にはソーシャルディスタンスの維持が必須である。食事を受け取ることが難しい人に対しては、無料配達サービスもある。

このほか、学生に対して自宅でのリモートラーニングが実施される中、パソコン等がない家庭にデバイスを貸し出すサービスもある。感染を防ぐためにヘルスケアや外食サービスの従事者が滞在するホテルの予約サービスも始まった。自宅待機が長引く中で、ストレスを感じる人々に対する200以上の言語でのカウンセリングサービスも無料で提供されている。

NY市でロックダウンを実際に経験してみてわかったことは、医療や資金面以外にも様々なサポートを必要とする人々が大勢いるということだ。そして、サポートを必要とする人々の声に懸命に耳を傾け、実際に様々なサポートを提供しようとする動きもたくさんある。しかし、サポートが実際に行われていても、知らなければ意味がない。筆者自身も緊急アラートがなければ、NY市の様々なサポート策を知ることはなかっただろう。個人が情報感度を高めることも重要ではあるが、ロックダウンという人々の交流が制限される中で、人々に必要な情報を確実に届ける工夫が不可欠といえよう。


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