大和総研コラム

新型コロナは大統領選挙にとっても波乱要因

  • 国際
  • 掲載日 : 2020年4月14日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 橋本政彦

新型コロナウイルスの感染拡大によって、本来であれば2020年の最大のイベントの1つであったはずの米国大統領選挙への注目度はだいぶ下がっているが、選挙はいよいよ本格化する。4月8日、民主党の指名候補争いにおいて、バーニー・サンダース上院議員が撤退を表明したことで、ジョー・バイデン前副大統領が指名候補になることがほぼ確定的となった。これまでの指名候補争いから、現職の共和党トランプ大統領と民主党バイデン氏の対決へと今後は焦点が移る。

政権奪還を狙う民主党バイデン氏にとっての最大の課題は、党内の結束をいかに固められるかだろう。前回の大統領選挙でヒラリー・クリントン氏が当時のトランプ候補に敗れた大きな要因は、予備選挙で争ったサンダース氏の支持層を最後まで取り込めなかったことが指摘されている。サンダース氏は、予備選挙からの撤退を表明したが、政策に対する影響力を残すため、今回も予備選挙・党員集会に候補者として名前を残すことを表明している。2016年と同じ轍を踏まないためにも、バイデン氏は、サンダース氏を支持する急進左派の取り込みが急務となる。

その意味においては、新型コロナウイルスの感染拡大は、バイデン氏にとっては逆風となる可能性がある。感染拡大防止策として大人数での集会が禁止されたことで、バイデン氏は有権者に直接、支持を訴えることが難しい。また、民主党は当初7月に予定していた党大会を8月に延期し、本選に向けた本格的なキャンペーンの開始が遅れることになる。

さらに、集会でのキャンペーンが難しくなる中、当面はメディアやインターネットを活用したキャンペーンの重要性が増すことになるとみられるが、これは現職のトランプ大統領に有利に働く可能性があろう。

新型コロナウイルスの感染拡大による急激な失業者の増加そのものはトランプ大統領にとって非常にネガティブな要因と考えられるが、トランプ大統領の支持率は低下するどころか、就任以降で最高に近い水準にある。一部の世論調査では、民主党支持者や無党派層からの支持率が上昇するという、これまでにはなかった動きが報告されている。新型コロナウイルスへの政策に加えて、記者会見が連日開かれたことによる露出の増加が支持率の上昇につながったと指摘されている。

もっとも、新型コロナウイルスの影響によって、本選の投票方法が変わる可能性があることにも注意が必要である。

大統領選挙の一般投票日は、法律によって11月1日よりも後の、最初の火曜日と定められており (2020年は11月3日) 、新たに法律を制定しない限り投票日を変更することができない。このため、現時点で、一般投票日が変わる可能性は低い一方、一部の議員からの提案により、郵送による投票の実施が検討されている。

郵送での投票は不正につながる恐れがあるため、導入に慎重な意見も多く、トランプ大統領も否定的である。しかし、こうした状況は今後の新型コロナウイルスの感染状況によって十分に変わり得る。仮に郵送での投票が実現することになれば、有権者の投票行動に大きな影響を及ぼすことが想定され、例えば、通常は投票率が低い若年層や低所得層の投票率の上昇などが選挙結果を左右する可能性もあろう。2020年の大統領選挙は、当初から混戦となることが見込まれていたが、新型コロナウイルスの影響によって、結果を占うことは一層難しくなりつつある。


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