大和総研コラム

自らも変わろうとする基本方針への期待

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2020年4月2日
  • 大和総研調査本部 主席研究員 兼 社会連携担当 岡野武志

農林水産省は、農林水産業・食品産業における環境政策の方向性を取りまとめた「農林水産省環境政策の基本方針」 (以下、「基本方針」) を公表した (※1) 。農林水産業・食品産業にとって、自然の資源や環境は産業を支える基盤であり、それらを維持・向上させることは、産業の持続可能性を高める上で不可欠ともいえる。農林水産省の「世界の食料需給見通し (※2) 」では、2050年の世界の食料需要量は2010年比1.7倍になると予想されており、日本の安心・安全な食料は、海外からさらに求められる可能性もある。基本方針は、日本の農林水産業・食品産業が、世界に先駆けた環境創造型産業に進化することを目指している。

高齢化や人手不足が広がる中で、農林水産業・食品産業が環境創造型産業に進化するためには、生産性の向上と環境対策を両立させるイノベーションが重要になる。日本が長く培ってきた農林水産業の技術とICTやAI、ロボットなどの先進技術とを組み合わせれば (※3) 、農林水産業を成長産業に変え、農山漁村を維持・発展させていくことが期待できる。政府は、これまでもスマート農林水産業の実現に向けた取組を推進しており (※4) 、最近では、大学・研究機関等との連携や金融などの異業種が参画する事例も少なくない。農林水産省のWEBサイトには、先進技術の活用例や関連する政策・事業などの情報も掲載されている (※5)

環境創造型産業と呼ばれるためには、スマート化や6次産業化などで新たな付加価値を生み出すだけでなく、物流・販売・外食などの事業者とも協力して、サプライチェーン全体で環境負荷の低減に取り組む必要がある。基本方針からは、SDGs達成を目指す事業者が環境調和への行動を広げ、ESG投資がその行動を後押しすることへの期待が読み取れる。事業者が環境調和への行動にコストをかけるためには、消費者が「つかう責任」を認識してサステナブルな商品を選択することも重要になる。基本方針は、生産と消費を両輪として、環境と経済成長に好循環を生む社会システムに転換していく必要があることも指摘している。

基本方針は、事業者や投資家、消費者などに対して理解や行動を求めるだけでなく、農林水産省自身もSDGsにふさわしい組織に成長することを表明している。農林水産省は、直轄事業や補助事業等に環境の視点を組み込んで政策のグリーン化を進めるとともに、同省職員の政策立案や消費行動においても環境やSDGsへの意識を高めていくとしている。施策の実践にあたっては、EBPM (Evidence-Based Policy Making) の考え方等に基づく定点観測を取り入れ、透明性を確保して着実な前進を目指すという。自らも変わろうとする基本方針が、さまざまな主体の意思決定プロセスを刺激し、行動変革に結びつくことを期待したい。

[図表]基本方針の理念、基本方針における主な取組

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