大和総研コラム

ESG投資に舵を切るヘッジファンド

  • 経済
  • 掲載日 : 2020年3月25日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 依田宏樹

ヘッジファンドは、株式や債券など様々な資産クラスに投資し、空売りなどの投資手法も用いながら、市場動向にかかわらず高い運用収益を追求するファンドである。このヘッジファンドを取り巻く状況は昨今、徐々に変わりつつあるようだ。パリ協定やSDGsの採択を追い風に、環境 (E) 、社会 (S) 、企業統治 (G) を考慮したESG投資が世界的な潮流となる中、ヘッジファンドにおいてもESG情報を活用した投資に舵を切る動きが目立ち始めている。

2019年7月に米国の情報ベンダーであるBarclayHedgeが公表した、世界主要国のヘッジファンドマネージャーに対して行った調査によると、株式投資の意思決定をする際に、2018年はヘッジファンドマネージャーの4割超がESG情報を考慮しており、2019年は約6割に増える見込みだという (発表時点) (※1) 。2019年12月には、英国のヘッジファンドであるTCI Fund Managementが投資先企業に対してCO2排出量の開示を要求するといった動きも見られた。このように、ESG投資の潮流はヘッジファンド業界にも着実に押し寄せている様子が窺える。

ヘッジファンドがESGへの関心を高める背景には、絶対的な運用収益の追求を目標とするヘッジファンドに対しても、機関投資家 (アセットオーナー) からESGの考慮を求める声が強まっている影響が大きい。実際、KPMG等が2020年2月に公表した報告書 (※2) によると、世界13ヵ国・地域のヘッジファンドマネージャーらへの調査において、ESG投資に駆り立てているものとして、アセットオーナーからの要求が高まっているためとの回答が首位 (72%) であった。また、ヘッジファンドマネージャーがESG情報を考慮する目的としては、超過リターンの獲得やリスク管理といった回答が大きな割合を占めている。

幅広い非財務情報であるESG情報が超過リターン獲得やリスク管理を行う上で有益な判断材料となり得ることから、ヘッジファンドがESG情報を考慮することには一定の合理性があり、そのような投資へのシフトは今後一層拡大していくものと考えられる。ただし、ESG情報の質の向上などがESG投資の課題として指摘されており、これはヘッジファンドがESGを考慮した投資を進める上でも当然ながら課題となるだろう。短期的なリターンが求められる傾向にあるヘッジファンドと、中長期的な視点でのリターン獲得を目指すESG投資とは、一見矛盾するようにも見えなくもない。今後、ESG情報を戦略上どのように位置づけ絶対収益の追求に活用していくのか、ヘッジファンドには的確な判断が求められそうだ。

  • ※1出所:BarclayHedgeのNews and Announcement, “Survey: ESG Factors Playing an Increasing Role in Allocation Decisions According to Backstop-BarclayHedge Fund Manager Survey”, July 24, 2019
  • ※2出所:KPMG, “Sustainable investing: fast-forwarding its evolution”, February 2020

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