大和総研コラム

IMビッグバンのクロスボーダー問題

  • 経済
  • 掲載日 : 2020年3月24日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 鈴木利光

非清算店頭デリバティブ取引に係る証拠金規制について、当初証拠金 (IM) の授受が、地方銀行や保険会社等にも求められ得るタイミングのことを、取引関係者の間では「IMビッグバン」と呼んでいる。

このIMビッグバンのタイミングが、従来の「2020年9月1日以降」から「2021年9月1日以降」に一年延期されたことは、記憶に新しい (※1)

一年延期されたとはいえ、IMビッグバンにより、IMの計算、ひいては実際のIM授受が求められることになる、すなわち「IM規制」の対象となる金融機関等の負担が大きいことに変わりはない。

とりわけ、米国籍やEU籍の金融機関等と非清算店頭デリバティブ取引を行っている日本の金融機関等は、そのポジション管理において、難しい舵取りが求められることになる。

というのも、日本ルールの証拠金規制と、米国ルール (CFTCルール。以下同様) 、EUルールの証拠金規制とでは、IM規制の「閾値」の算入の仕方に差異があるからである。

ここでいう「閾値」とは、IM規制の対象に含まれることになる、非清算店頭デリバティブ取引の想定元本額をいう。

IMビッグバン、すなわち「2021年9月1日以降」の閾値は、日米欧でそれぞれ、「1.1兆円」超、「80億ドル」超、「80億ユーロ」超 (ほぼ同水準) である。

しかし、日本ルールの証拠金規制では、閾値の計算に算入すべき非清算店頭デリバティブ取引は、自身のみならず、子会社や兄弟会社 (閾値の計算はグループ単位。以下同様) 、ひいてはカウンターパーティも金融機関等であるものに限られる。

これに対して、米国ルール、EUルールの証拠金規制では、子会社や兄弟会社、カウンターパーティが金融機関等でない、事業法人である場合の非清算店頭デリバティブ取引についても、閾値の計算に算入する必要がある。

それでは、米国籍やEU籍の金融機関等と非清算店頭デリバティブ取引を行っている日本の金融機関等は、閾値の計算にあたって、米国ルールやEUルールに従う必要があるのだろうか。

日本 (金融庁) では、米国 (CFTC) 及びEU (欧州委員会) との間で、お互いの証拠金規制について、それぞれ相互に「同等性評価」を表明し合っていることから、閾値の計算にあたって、日本ルールに従っていれば足りるのではないか。

あくまで私見だが、こうした場合、日本の金融機関等は、米国ルールやEUルールに従う必要がある。

実際には、カウンターパーティとなる、米国籍やEU籍の金融機関等と相談して決める、ということになろう。

というのも、証拠金規制の「同等性評価」は、あくまでも、米国ルール、EUルールと日本ルールとの間で、「重複適用」がある場合、その重複する部分についてはいずれかのルールに従うことで足りる、と述べているにとどまり、 (今回問題にしている、IMの閾値の算入の仕方のような、) 規制内容の差異部分には及ばないためである。

結果として、IMビッグバンにおいては、日本ルールのIM規制には服さないものの、米国ルールやEUルールのIM規制には服する、という日本の金融機関等が出てくる可能性もあると考える。


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