大和総研コラム

中国:新型肺炎、初動の失敗と感染拡大抑制の教訓~湖北省以外の新規感染者はゼロに~

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2020年3月12日
  • 大和総研経済調査部 主席研究員 齋藤尚登

中国は新型コロナウイルス肺炎の初期段階の封じ込めに失敗した。感染源とされる湖北省武漢市は旧正月の連休が始まる前日の1月23日に空港や駅を閉鎖し、公共交通機関の運行を停止するなど強硬な措置をとった。しかし、「春運」と呼ばれる特別輸送体制 (鉄道、航空の増便) は1月10日から始まっており、感染者は中国全土、そして世界中に拡散した。

中国政府は1月24日より全国民を対象に国内団体旅行を、27日より海外の団体旅行を禁止した。さらに、新型肺炎の感染拡大を食い止めるために、マスクの着用や手洗い・うがい・洗顔の励行のほか、ヒトとの接触を厳格に制限し、①濃厚接触者の専用ホテルなどでの徹底的な集中隔離・管理 (3月7日には福建省泉州市で隔離先のホテルが入居するビルが倒壊し、多数の死傷者が出る痛ましいケースが発生した) 、②学校などの一斉休校、③マンションやデパート、オフィスなどの出入りの厳格な管理 (体温測定、身分証明書や携帯電話情報の登録。オフィスでは出社人数の制限も) 、④地下鉄の出入口など至る所での体温測定、⑤生活必需品などの買い物回数・人数の制限、⑥多くのレストランの休業、営業時も利用者の間隔を空けるなどの制限、⑦映画館など娯楽施設の閉鎖、といった措置を実施している。

中国政府は感染拡大防止を目的に、1月24日に始まった旧正月の連休の最終日を1月30日から2月2日に延長したが、ほとんどの地方政府は一部企業を例外に、2月9日 (湖北省は3月10日) までの休業を要請した。さらに、中国政府は農民工 (農村からの出稼ぎ労働者) に対して、段階的な離郷を求め、しかも、多くの都市では外地から戻った人々に対して、14日間の出社停止を求めるなどしており、操業の正常化が遅れた。

新型肺炎感染拡大抑制策を強化するほど、景気へのダメージは深くなる。3月16日に1月~2月の主要経済統計が発表される予定だが、鉱工業生産、固定資産投資、小売売上の全てが前年割れとなる可能性がある。新型肺炎の早期終息と景気安定の二兎を追うことはできない。早期終息を優先すれば、景気への悪影響は大きくなり、景気への配慮を重視すれば、新型肺炎の拡大は長期化するということだ。

中国は初動に失敗したが、徹底的かつ厳格な措置が奏功し、足元では感染拡大が激減している。中国国家衛生健康委員会によると、湖北省を除く全国の新規感染者数は、3月7日~9日はゼロとなった。湖北省でも3月6日以降、新規感染者数は2桁に減少した。

感染拡大抑制の主戦場は中国から中国以外に移った。新規感染者数でいえば、2月26日以降は中国以外が中国を上回り、今やほとんどをイタリア、イランなど中国以外が占めている。感染拡大に直面する国々にとって、中国の経験は初動の重要性と、それに失敗した後に感染拡大を抑制するには相当厳しい措置を講じる必要があることを示している。そして中国では厳しい措置の発動から1ヵ月強で劇的な改善をみた。1ヵ月は決して短くはないが、感染拡大の終息には腹をくくるしかないのではないか。


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