大和総研コラム

「働き方改革」:PTA活動への波及を期待

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2020年3月2日
  • 大和総研経済調査部 研究員 矢澤朋子

安倍政権は2016年夏以降働き方改革を推進しているが、実際に月100時間以上の残業を行う労働者や正社員の平均月間就業時間は大きく減少し、その成果が発現している (※1) 。しかし、捗々しい変化が見られない分野もある。今年度、筆者は初めて小学校のPTA委員を経験し、PTA活動は「働き方改革」が必要な分野の一つではないかと考えた。

筆者の子どもが通う公立小学校では、PTA執行部 (会長や副会長などの役員会) があり、その下に各学年から選出されたPTA委員 (任期1年) によって構成される広報や校外生活指導などの部がある。筆者は広報部の部長を務めることとなった。

広報部は比較的業務負担が重いとは聞いていたが、2019年4~12月の9か月間で、筆者は自宅内外で20日ほど (1~4時間 / 日) 作業を行い、他に15回程度学校に足を運んだ (※2) 。PTA活動に費やす時間のみを示す統計は見当たらなかったが、総務省「平成28年社会生活基本調査」では、PTA活動を含む子どもを対象としたボランティア活動 (子供会の世話、子育て支援、学校行事の手伝いなど) にどのくらいの頻度で参加したかを確認できる (下図表参照) 。

[図表] 子どもを対象としたボランティア活動

子どものいる世帯のうち、「小学生の子どものみ、もしくは小学生+中学生以上の子どもがいる世帯」の妻の年間平均行動日数は20.2日となっており、「未就学児のみ、もしくは未就学児+小学生以上の子どもがいる世帯」のそれと比べて大きく増加している。ここから、子どもを対象としたボランティア活動の平均行動日数は、子が就学すると増加することが推測できる。登下校時の見守りや運動会の手伝い等、保護者が学校活動へ協力する機会が増すためと考えられるが、PTA役員や委員の負担が大きいことも影響しているのではないだろうか。

仮に昨年の4~12月と同じ頻度で筆者が今年度のPTA業務を行ったとすると、年間行動日数はおよそ46.7日となる。昨年度以前 (PTA委員ではない場合) の実績 (年間5~8日程度) と比較すると大幅な増加となっている。これは筆者一人の実績ではあるが、特に年度初めはPTA役員選出に関する議論が絶えず話題になることから、PTA委員や役員の負担の重さを感じる保護者は少なくないであろう。PTA委員や役員の過度な負担が、小学生の子を持つ親の子どもを対象としたボランティア活動の平均行動日数を大きく引き上げている一因と考えられよう。

PTA委員として活動した印象としては、PTAは「以前からある活動を従来通りのやり方で行う」傾向があるため、活動内容が陳腐化して目的がわかりづらく、活動すること自体が目的となっていたり、IT化などを取り入れず旧態依然の非効率な方法で作業したりという状況が見られる。一方で、学校行事の運営や関連する地域活動はPTAの支援がなければ円滑に進まない (もしくは実施そのものが難しい) ことも多い。よって、単純に「PTA廃止」というのは考え物であろう。

共働き世帯の増加により時間的に余裕のない保護者が増え、加えて教師の過度な業務負担の軽減が叫ばれている中、PTA活動の取捨選択や配分の見直し、効率化といった現実的な改革が必要と考える。同時に、「長時間PTA活動の是正、柔軟なPTA活動がしやすい環境整備、子育て・介護・病気治療とPTA活動の両立、 (現在は相対的に参加が少ない) 男性が活動しやすい環境整備」 (※3) など、「働き方改革」も進めていく必要があろう。

  • ※1詳しくは、田村 統久「働き方改革関連法は何をもたらしているか」 (2020年2月6日、大和総研レポート) 参照
  • ※2筆者の場合、年3回の広報紙発行にあたり、掲載案の作成、学校への取材許可依頼 (手紙) 作成、アンケート調査票作成、業務分担決定、取材・撮影、コメント作成、広報紙原稿チェック、印刷業者とのやり取りなどを行った。他に、PTA定例会報告書の作成やPTA主催イベントの手伝い、日本PTA全国協議会開催のイベントへの出席等が挙げられる。
  • ※3安倍政権による働き方改革推進の取り組みである「長時間労働の是正、柔軟な働き方がしやすい環境整備、子育て・介護・病気治療と仕事の両立、女性が働きやすい環境整備」 (出所:厚生労働省ウェブサイト) の「働き方」、「労働」、「仕事」を「PTA活動」に、「女性」を「男性」に置き換えた。

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