大和総研コラム

第3国以上、加盟国未満の関係とは ?

  • 国際
  • 掲載日 : 2020年2月20日
  • 大和総研経済調査部 主席研究員 山崎加津子

1月31日の英国時間23時 (欧州中央時間では2月1日の午前0時) に、英国はついにEU (欧州連合) からの離脱を果たした。これをもって英国はEUの政策決定に参加する権限を失い、欧州議会から英国の73議員がいなくなった。また、EU首脳会議や閣僚理事会 (EUでは各国の閣僚が出席する財務相理事会、外相理事会などが定期的に開催されている) に英国の代表が出席することはもはやない。このほか、EUの統計局であるユーロスタットは、2月1日以降、EU統計を英国を除いた27カ国ベースとしている。

もっとも、EU離脱後も変化していないことの方がはるかに多い。2020年末までは「移行期間」として、英国をEU加盟国であるかのように扱う取り決めになっているためである。英国はEUの単一市場にとどまり、EUとの間で「人、物、資本、サービス」は自由に移動している。EUの関税同盟にもとどまり、対EU貿易は関税なし、対EU以外の貿易はEUの共通関税が引き続き適用されている。他方で英国はEU予算への拠出金を支払う義務があり、また、欧州司法裁判所の管轄下に置かれる。

「移行期間」の役割は、英国とEUの関係の急激な変化を回避し、英国とEUの新たな関係構築を協議するための時間を確保することである。同協議は3月初めに開始される見込みだが、その前哨戦では英国とEUの主張の隔たりが目立つ。英国側はEUとカナダが締結した自由貿易協定を手本とする通商協定の締結を目指すが、最優先事項は「EUの法規制から自由になること」であるとし、それがかなわない場合、EUとの通商協定を締結しないという選択肢も辞さない姿勢である。また、移行期間を延長しない方針を強調している。

これに対してEU側は、英国と野心的かつ包括的な新協定を締結することに意欲を示している。EUのバルニエ首席交渉官が2月初めに提示した新協定案は、 (1) 包括協定 (基本的価値やガバナンスについて) 、 (2) 経済協定 (通商協定、漁業権、公正な競争の保証などを含む) 、 (3) 安全保障協定 (外交、防衛、司法協力などを含む) の三部構成となっている。このうち通商協定に関しては、英国からの輸入品を「関税なし、数量割り当てなし」とすることを提案しているが、その条件として英国に「公正な競争」の保証を求め、環境規制、労働者保護規定、政府による企業救済などに関するEU法を受け入れるよう求めている。また、交渉範囲が多岐にわたることを踏まえれば、2020年末までという協議期間はあまりに短いと指摘している。

EU側のねらいは、英国を「第3国以上、加盟国未満」の国として位置付けることである。英国がEU加盟国でなくなったものの、地理的にも経済的にも非常に近い関係にあることを考えれば、一見わかりやすい方針だが、それをどう具体化するかまだ明確ではなく、果たしてそのような都合の良い関係が存在し得るかもはっきりしない。同様に英国が主張する「EU法規制からの自由」に関しても、まだ大枠の方針が提示されたにすぎない。英国は過去40年以上にわたり、統合強化を進めるEUの一員であったため、新たな関係を協議するべき分野は通商に限定されず、外交、安全保障、司法協力など多岐にわたる。「特別な関係」であるからこその難しさが、これから本格化する協議に色濃く反映されることになろう。おそらくは通商協議などに分野を限定して移行期間中の合意を目指し、積み残された分野での新たな関係構築に向けた協議はその後も数年単位で継続されると予想される。


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