大和総研コラム

「マイナポイント制度で一石三鳥」の現実味

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2020年2月18日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 長内智

昨年2019年は、民間決済事業者の大型キャッシュバック・キャンペーンや政府が10月に導入した「ポイント還元制度」によってキャッシュレス化の動きが加速し、まさに「キャッシュレス化元年」と呼べるような年になった。現在もポイント還元制度の恩恵を求めて、現金払いからキャッシュレス決済に切り替える動きが見られ、この制度は一定の効果をもたらしていると評価できる。

今年については、ポイント還元制度が6月末に終了し、その後、9月に「マイナポイント制度」という新たなキャッシュレス化推進策が導入される予定である。新たな制度は、2021年3月までの7ヵ月間に限定されている。また、2つの制度が少し間隔をあけて実施されるという、分かりにくいスケジュールとなっている点には留意したい。

マイナポイント制度は、マイナンバーカードの保有者が民間のキャッシュレス決済手段を用いてチャージ等をした場合、その25%分のマイナポイントが付与されるというものであり、ポイントの上限額は5,000円分となっている。付与されたポイントは、実際の店舗やオンライン店舗での支払いにあてられる。消費者は、この制度の対象となるために、マイナンバーカードを取得し、さらに専用IDである「マイキーID」を追加で設定する必要がある。

そして、この政策には、①2020年1月20日時点で普及率が15% (総務省資料) にとどまるマイナンバーカード保有者の増加、②ポイント還元制度終了後の消費の落ち込みの緩和、③キャッシュレス化の促進、という3つの狙いがある。すなわち、一石二鳥ならぬ、いわば一石三鳥を狙った政策だと捉えられる。

日本の消費者は、決済手段を選択する際にポイントや割引などの便益性を重視する傾向が強いため、マイナポイント制度も一定の効果が見込まれよう。実際、ポイントの還元率が25%とかなり高い点は魅力的だ。ただ課題も少なくない。

例えば、消費者は、民間のキャッシュレス決済手段の導入に加えて、マイナンバーカードおよびマイキーIDを準備する必要があり、使い始めるまでに手間がかかる。また、ポイント還元制度では、決済事業者の加盟店手数料率に上限を設けて加盟店の手数料負担を軽減させていた。しかし、マイナポイント制度では、現時点において、そうした加盟店の負担軽減措置は設けられていない。

その他、この制度の長所と短所を総合的に勘案すると、一石三鳥を実現するのはかなり厳しいというのが正直なところである。そもそも、短期間で終了するポイント還元制度 (9ヵ月) とマイナポイント制度 (7ヵ月) をつぎはぎしたところで、長期的かつ十分な効果は期待しにくいだろう。

現在、キャッシュレス決済に関しては、決済手段の「乱立」が大きな問題となっている。制度面については、推進策の「乱発」に改善の余地がありそうだ。


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