大和総研コラム

2020年、有価証券報告書の新たな開示に向けて

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2020年1月20日
  • 大和総研金融調査部 研究員 藤野大輝

今年の3月期の有価証券報告書から、開示が一部拡充される。すでに各社では対応が進んでいることと思われるが、どう対応していけばよいのか、今一度検討してみたいと考える。

新たな開示として、「監査の状況」について、監査役・監査役会 (監査等委員会設置会社なら監査等委員会、指名委員会等設置会社なら監査委員会) の活動状況などの開示が求められる。また、「経営方針、経営環境、対処すべき課題等」、「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」について、経営者の認識や経営方針・経営戦略と関連付けた記載 (以下、「記述情報の充実」という) が求められる (※1)

これらの新たな開示項目に対して、どのように対応すればよいのかについて、金融庁は「記述情報の開示の好事例集」 (以下、好事例集) (※2) を公表し、望ましい開示の実例を示している。好事例集では、昨年から開示が義務付けられた「役員の報酬等」の開示例や「政策保有株式」の好開示のポイント (※3) のほか、先述の今年から開示が義務付けられる各項目の参考になる事例が示されている。

監査の状況に関して、好事例集では、監査役・監査役会の活動状況について、監査役会の開催回数、監査役の出席回数、1回あたりの所要時間、主な検討事項・決議内容・報告内容などを記載することが望ましいとしている。また、監査公認会計士等の継続監査期間について、監査法人の業務執行社員のローテーションが適切に行われている旨や継続監査期間が調査可能な範囲を超えている可能性がある旨などを記載している事例を挙げている。監査の状況については、詳細かつ正確な開示を行うことが期待されている。

「記述情報の充実」に関しては、好事例集では、それぞれの項目について多くの事例を挙げている。ポイントとしては、①経営者の視点からの情報を提供すること (課題の把握や指標の設定等) 、②セグメント単位での情報の充実を図ること、③経営環境、経営方針・戦略、課題などの関連性がよくわかるような記載をすること、④財務情報だけでなくESG等の非財務情報も組み合わせて開示すること、⑤図表等を用いてわかりやすい説明をすることなどが挙げられる。

「記述情報の充実」に向けて、企業として、より経営者の視点を反映していくためには、経営者が有価証券報告書の作成に一層積極的にかかわっていくことが必要であろう。また、わかりやすい開示のためには、統合報告書におけるCEO等のメッセージ、図表、写真等を活用していくことも考えられるだろう。ただし、ポイントをチェックリストのようにとらえ、横並びの開示になってしまっては元も子もない。好事例集の様々な事例を参考にしつつ、良い点は取り入れ、各社が独自の工夫を行い、投資家にとって充実した開示が行われることが期待されているのではないだろうか。


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