大和総研コラム

理解されにくい金融政策

中央銀行のコミュニケーションの工夫
  • 経済
  • 掲載日 : 2019年12月16日
  • 大和総研金融調査部 研究員 中村文香

各国の中央銀行で行われている非伝統的な金融政策においては、伝統的な金融政策に比べ、市場や一般の人たちとのコミュニケーションの重要性が高い。日本銀行をはじめとする中央銀行が導入している「フォワードガイダンス」は、中央銀行が声明などで将来にわたって緩和的な金融政策の維持を約束し、それによって人々が物価上昇期待を形成することで効果を発揮する。日銀は、金融政策決定会合後の記者会見や議事要旨の公表に加え、日銀幹部の講演録の公表も行うなど、物価安定目標2%の達成に向け、強力な金融緩和を行っていることを随時発信している。

しかし、その情報発信は、ウェブサイトやメディアを通じた一方通行のものになりがちだ。各地で行われている金融経済懇談会などで地方の行政・経済界の代表者と意見交換を行うなど双方向のコミュニケーションにも取り組んでいるものの、市場関係者ではない人々には日銀の金融政策はほとんど認知されていないようだ。日銀の「生活意識に関するアンケート調査」 (2019年9月調査) によると、2%の物価安定目標や日銀が積極的な金融緩和を行っていることについて「知っている」と回答した人の割合は25%に満たなかった。教育の問題など、他の要因も考えられるものの、一方通行のコミュニケーションが認知度の低さの一因になっているのではないだろうか。物価安定目標や、その達成のために日銀が積極的な金融緩和を行っていることすら知られていないとすれば、フォワードガイダンスを通じた目標達成は容易でない。そもそも経済や金融に関するニュースに関心がない人たちに働きかけるには、双方向のコミュニケーションについて一段の工夫が必要であるかもしれない。

米国の連邦準備制度 (Fed) は2019年から“Fed Listens”と呼ばれる双方向のコミュニケーションに向けた新たな取り組みを始めている。“Fed Listens”では、米国各地区の連邦準備銀行が、米国経済に関心を持つ幅広い人々・グループに向けたタウンホール形式でのイベントを開催している。メディア等を通じた一方通行の情報発信と比べ、双方向の意見交換では地域の人々が金融政策に対する理解をより深めることが期待できる。ただし、経済に関心がない人へのアプローチという点では課題が残る。

こうした中央銀行による双方向のコミュニケーションの対象者をより広くすることで、中央銀行や金融政策に対する理解も深まりうる。今後も中央銀行のより良いコミュニケーション手段の模索は続くだろう。


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