大和総研コラム

北欧で見た銀行のATM共通化に想う

  • 国際
  • 掲載日 : 2019年11月19日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 長内智

2019年後半以降、世界的な景気減速や米中貿易摩擦の激化に伴う不確実性の高まりを背景に、海外の中央銀行が金融緩和姿勢を強め、世界的に「金融緩和の連鎖」ともいえる状況が生じている。こうした海外中銀の動向や、国内のインフレ率が足下で+1%を下回る水準で停滞していることを踏まえると、日本の長引く超低金利環境の「出口」は全く見通せない状況だ。

超低金利環境の長期化に伴う負の影響は、10月後半以降に発表が本格化した上場企業の2019年度中間決算においても、銀行の収益悪化という形で表れており、とりわけ預貸ビジネスの割合が大きい地域銀行で顕著である。こうした厳しい経営環境の下、銀行は、少しでも収益性を維持・拡大するためにATM・店舗網の見直しを通じた効率化・省人化を進めている。

このような銀行の取り組みに関係する海外の事例として、北欧の銀行のATM共通化について簡単に紹介したい。去る9月後半、金融インフラの効率化・省人化の面で日本のかなり先を行っている北欧諸国を訪問する機会を得た。この訪問では、非常に多くの発見や学びがあり、その1つの事例としてスウェーデンとフィンランドにおけるATMの共通化が挙げられる。

現在、スウェーデンでは、Bankomat社の“Bankomat”というATMが独占的な状況にあり、フィンランドでは、Automatia社の“Otto”というATMが非常に高いシェアを持つ。つまり、両国では、全銀行のATMがほぼ共通化されているといえる。さらに、実際に行ってみて驚いたのが、そのATMの数が日本に比べてかなり少なく、かつ利用している現地の人をほとんど見なかったことである。

この背景として、訪問先の面談者から、近年の急速なキャッシュレス化の影響のほか、小国であるため無駄なことや非効率的なことをしている余裕はなく、銀行が協力してATMの共通化を行ったという話を聞いた。北欧の銀行は、超低金利環境下でも比較的収益性を維持できているが、その要因の1つとして、これまでのATMの共通化や店舗の削減といった金融インフラの効率化・省人化の取り組みが存在する。

他方、日本では、顧客との重要な接点であるATMの共通化をどの程度進めるべきかについては、銀行によって大きな差があるとみられる。最近の動向を見ると、コスト削減や顧客の利便性向上のためにATMの共同利用を進める銀行が着実に増えている一方、いわゆるコンビニ銀行による新たなATMの整備 (増加) が進む。

こうした現状を踏まえると、北欧で見た全銀行のATM共通化というモデルを、そのまま日本に当てはめることは必ずしも適当ではないだろう。ただ注目したいのは、北欧の銀行が前向きに協力して金融インフラの効率化・省人化を進めてきたという長期的な経緯である。今後も超低金利環境に伴う負の影響が続くと見込まれるなか、北欧の銀行に根付く「長期的な協力関係」は、日本の金融インフラの効率化・省人化においても大いに参考になるのではないだろうか。


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