大和総研コラム

厚生年金の適用拡大における議論が進む

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2019年10月28日
  • 大和総研政策調査部 研究員 佐川あぐり

2019年8月末に公表された公的年金の財政検証の結果を踏まえて、年金改革が行われる見通しである。その1つとして特に注目されるのが、短時間労働者に対するさらなる厚生年金の適用拡大である。かつては、雇用者のうちフルタイムで週30時間以上働く人が厚生年金の対象だったが、法改正により、2016年10月以降は、週20~30時間勤務などの要件を満たす短時間労働者にも適用されるようになった。これまでの適用拡大により、新たに40万人以上が厚生年金に加入している。厚生年金に加入すれば、基礎年金に加えて報酬比例年金も受け取れるため、将来の年金額を増やすことができる。

現在、政府は、厚生年金のさらなる適用拡大を進める方針を示しているが、今後の見直しの論点は、従業員規模要件の見直しである。現在は、従業員501人以上の事業所では短時間労働者に対する厚生年金の適用が義務づけられているのに対し、500人以下では労使合意を条件とした任意適用となっている。つまり、同じ短時間労働者でも勤め先によって厚生年金の適用の可否が異なる状況だ。就労上の条件のイコールフッティングを図る上で、従業員規模要件の見直しは必要であると考える。

9月20日には、この問題を専門的に議論してきた厚生労働省「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」において、これまでの議論のとりまとめ案が公表された。それによれば、従業員501人以上の要件は撤廃を視野に見直していく方向性が示されており、今後は、全世代型社会保障検討会議や社会保障審議会年金部会などで、具体的な制度改正内容の議論が本格化するとみられる。

だが、従業員501人以上という要件を見直すとなれば、今後の適用拡大の対象となるのは主に中小・零細企業だ。すでに、採用にかかるコストや毎年引き上げられている最低賃金への対応など、中小企業には様々な負担がかかっている。それに加えて、労使折半である厚生年金の保険料負担も増すとなれば、その影響は小さくないだろう。従業員数の要件を段階的に引き下げるなどの策が考えられるほか、政府が実施するキャリアアップ助成金制度などの利用を促すなど、中小企業の負担増への十分な配慮も必要だろう。


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