大和総研コラム

ESG / SDGsの非財務情報開示を誰がチェックするのか

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2019年8月15日
  • 大和総研金融調査部 制度調査担当部長 吉井一洋

非財務情報開示が注目されている。わが国では、有価証券報告書で、2019年3月期からは政策保有株式、役員報酬、コーポレート・ガバナンス、2020年3月期からは経営方針・経営戦略 (ビジネスモデルを含む) 、リスク情報、MD&A情報、監査の状況などの開示の拡充が図られる。

さらに、最近はTCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース) が注目されている。FSB (金融安定理事会) の下に設けられたタスクフォースで、2017年6月に最終報告書を公表した。報告書では、企業に、気候関連のリスクと機会が企業財務にもたらす影響を、シナリオ分析を交えて開示することを提言している。わが国では経済産業省・環境省・金融庁が協力して推進しており、賛同・署名した企業・機関は186 (2019年8月8日時点) に達している。

非財務情報開示拡充の流れの背後には、これらの情報開示を通じて (機関) 投資家と企業の経営者との間の、長期的な視点に立った対話を促し、長期的な企業価値の向上を目指すという考え方がある。もっとも、非財務情報のうちESG / SDGs関連の情報は、わが国では、法定開示書類である有価証券報告書よりは、自主的な開示書類であるアニュアルレポートやCSR報告書・サステナビリティ報告書、統合報告書、あるいはウェブサイトで開示される例が多い。

今後、ESG / SDGs関連項目が注目されるにつれ、企業経営にかかわる重要な項目として、有価証券報告書においても開示する企業は増えていくものと思われる。他方で、アニュアルレポート・CSRレポート・統合報告書などの記述内容も充実されていくであろう。それとともに、非財務情報を誰がチェックするのかが問題となる。開示内容の正確性は、本来は、開示企業の経営者が責任を負うべきものである。しかし、投資家をはじめとする利用者からすれば、外部の第三者に開示内容のチェックを求めたいところである。これについて、2つの重要な動きがある。

一つは、有価証券報告書における開示のチェックの強化である。こちらについて、現在、企業会計審議会監査部会で、監査基準委員会報告720号という基準の見直しが検討されている。現在は、監査報告書付の財務情報と同じ報告書 (即ち有価証券報告書) で開示された非財務情報について、監査法人は通読をし、財務諸表との間で重要な違いがある場合には監査報告書に追記することとされている。国際監査基準 (ISA) 720号では、監査法人が行うべき手続きが強化されており、非財務情報と監査法人が監査を通じて得た知識との間でも重要な違いがないかを検討し、非財務情報に重要な虚偽記載があればその内容を、なければない旨を記載することとしている。同様の改訂をわが国でも行うかが議論されている。

もう一つは、自主的な開示書類における非財務情報のチェックの強化である。ISAを定めるIAASB (国際監査・保証基準審議会) で、統合報告書等の自主的開示書類の非財務情報をチェックする際の基準 (ISAE3000) のガイダンスを策定するプロジェクトが進められており、2019年2月にコンサルテーション・ペーパーが公表されている。同ペーパーでは、監査法人に、その報告書の想定される利用者の目線で、企業が適用する作成規準の妥当性のチェック、情報の重要性 (開示すべきか) の決定過程への関与を求めるなどの内容が盛り込まれている。同プロジェクトは2020年末に完成予定である。実務上対応可能かという問題はあるが、策定に多少は関与する者として大いに期待したいところである。


このコラムと同じカテゴリの他のコラムを読む

年別

カテゴリ別