大和総研コラム

ビジネスチャンスの拡大にもつながる「食品ロス」対策

  • 環境
  • 掲載日 : 2019年7月29日
  • 大和総研政策調査部 研究員 菅原佑香

土用の丑の日には、店頭にうなぎの蒲焼が陳列される。この時期になると、食品の大量廃棄の問題がマスコミで取り上げられることが多くなる。うなぎの蒲焼に限らず、クリスマスケーキや恵方巻き、おせち料理など季節のイベント時に売り出される商品は、需要を読み間違えれば大量に廃棄せざるを得ないリスクが特に大きい。まだ食べることができる大量の食品が廃棄される「食品ロス」が社会問題となっている。

農林水産省及び環境省によれば、食品ロスは2016年度に643万トンも発生したと推計されている。このうち、食品関連の製造業や卸・小売業などからの廃棄量は352万トン、一般家庭からの廃棄量は291万トンとなっており、食品関連事業者からの廃棄量がやや多いものの、事業者と消費者の双方が取り組みを進めなければ、食品ロスの解決には至らないであろう。

食品ロスの削減は、国連で採択された「持続可能な開発目標」 (Sustainable Development Goals:SDGs) のターゲットの1つになっている。2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させることが盛り込まれているのである。日本では、2019年5月に公布された「食品ロスの削減の推進に関する法律」において、国や自治体、事業者、消費者が担う責務が明確化され、社会全体で問題に取り組むことがこれまで以上に求められている。

廃棄処分はエネルギーやコストを無駄に使い、環境に負荷を与えることから、食品業界においては、食品ロスの問題に取り組むことが事業リスクの低減や社会的価値の増大につながると期待されている。最近では、土用の丑の日の蒲焼や大型クリスマスケーキなどの季節性の商品を完全予約制にする店舗もある。事前予約した顧客しか購入できないようにすることで売れ残りをなくし、廃棄される食品のコストや手間を軽減する目的である。

他の業界においても食品ロスの問題を、ビジネス拡大のチャンスにつなげている企業が多い。気象情報会社では気象情報を活用した需要予測サービスをメーカーや小売業者に提供している。それによってメーカーや小売業者は発注を受けてからの受注生産や販売にシフトする活動などの取り組みを進めている。また飲食店で余った食材や料理を低価格でアプリから購入できるフードシェアリングサービスの普及も進んでいる。

サプライチェーンの中で食品ロスを減らす取り組みを進める企業が増えていくことで、他の業界や企業、消費者の食品ロスに対する意識を変え、積極的に取り組みを行うきっかけへと波及していくことが期待される。


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