大和総研コラム

NISA利用者は年初に株を買う

~鍵はNISAの恒久化~
  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2019年7月22日
  • 大和総研金融調査部 研究員 藤野大輝

NISAがスタートしてから5年が経過した。NISAとは、簡単に言えば、毎年120万円の枠の中で株式等の投資を行い、その株式等の配当益や譲渡益が5年間非課税となる制度である (一般NISAの場合。以下では「NISA」は一般NISAを指すとする) (※1)

ここで、2018年末までのNISA口座内での株式の買付額を四半期別に見てみると、どの年も年初である1-3月期の株式買付額が、他の四半期に比べて明らかに大きいことが分かる (図表) (※2) 。これはNISA口座内に限られた事象であり、個人の現物株式の買付額全体では、各四半期で顕著な差や傾向はない。

[図表] NISA口座内での株式買付額

この理由として一つ考えられることは、非課税期間の影響である。NISA口座開設者は、毎年1月1日にNISA口座内に新たな非課税勘定を設ける。この勘定内で購入した株式等について、非課税期間は5年目の12月末までである。例えば、2019年1月に購入した株式と2019年12月に購入した株式は、いずれも非課税期間は2023年12月末までとなる。

非課税勘定内で、1月に投資を行えば、約5年間の非課税期間があるが、12月に投資を行えば約4年間の非課税期間となる。つまり、12月に株式を買うよりも、1月に株式を買う方が、配当が非課税になる回数が多い可能性が高いと考えられる。また、1月に購入した方がより長い期間にわたって非課税で譲渡できるチャンスがある。こうした背景により、投資家にとってはNISA口座内ではなるべく年初に投資を行うインセンティブが生じているのではないだろうか。

NISAでの1-3月期の株式買付額は他の四半期より0.2兆円~0.5兆円ほど大きい。これは、各四半期の個人の現物株式買付額全体の数% (※3) であり、市場に大きな影響はないかもしれない。しかし、個人投資家にとっては、NISA制度を利用する際には投資する月による有利・不利が意識され、純粋な投資判断に不必要な影響を及ぼしてしまっている可能性がある。この影響を最小化するにはどうすればよいだろうか。

これについては、かねて金融業界から強く要望されている、NISAの恒久化が一つの鍵となりうる。新たにNISA勘定を設定できるのは2023年までとされているが、これが恒久化されれば、ロールオーバーを続けることで非課税期間を無限に延長できる。もしくは、NISA勘定内の非課税期間が5年から恒久化されれば、ロールオーバーせずとも、非課税勘定内で株式をずっと保有できる。

そもそも、5年間という期限があることで年初に株式を買うインセンティブが生じているということは、NISA利用者の多くは短期投資ではなく、数年にわたって株式を保有することを想定していると考えられる。NISAの恒久化が行われ、保有の期限がなくなれば、こうした投資家にとっても非課税となる配当金の回数や非課税で譲渡できる期間の差異は誤差となり、年初に株式を買うという不必要な偏りは緩和されると思われる。

NISAは「貯蓄から投資へ」を促す効果的な制度だが、期限付きのままでは投資判断に余計な影響を及ぼす。恒久化することで、より使いやすい制度となるのではないだろうか。


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