大和総研コラム

米国で模索が進む投資アドバイザリーサービスの新戦略

  • 国際
  • 掲載日 : 2019年7月17日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター 研究員 (NY駐在) 矢作大祐

米国では、販売手数料がゼロのノーロードファンドや、運用・管理手数料である信託報酬ゼロのファンド、さらには条件付きでマイナスの信託報酬となるファンド (投資家はファンドを保有することでキャッシュバックを受ける) が登場するなど、低コストの金融商品が増加している。こうしたコスト低下圧力は、規制や世代の変化、投資環境の変化を背景に、投資アドバイザリー・フィーにも及びつつある。例えば、相対的に安価な投資アドバイザリー・フィーを実現するロボアドバイザーの残高拡大などがコスト低下圧力増加の代表例である。また、足元ではサブスクリプション・フィー (月額で定額のフィーを徴収) も登場している。サブスクリプション・フィーは、投資家の投資残高が大きくなればなるほど、定率フィー (預かり資産残高に応じて定率のフィーを徴収) よりも手数料率が割安になる点に特徴がある。

投資アドバイザリー・フィーが低下すれば、多くの人が手軽に投資アドバイザリーサービスを利用できようになるかもしれない。投資アドバイザリーサービスを提供する金融機関やIFA (独立系投資アドバイザー) にとっても、投資家層のすそ野の広がりを期待できるだろう。ただし、アドバイザリー・フィーが低下する中でも、収益を確保できるような戦略が必要となる。こうした中、米国の金融機関やIFAが取り組んでいる戦略は主に二点挙げられる。

一つ目は、預かり資産残高及び管理資産残高の規模拡大である。預かり資産残高はスケールメリットの確保が目的と考えられる。2017年までは市場の拡大に伴う預かり資産残高の増加であったが、2018年以降はIFAのM&A件数も増加しつつある。また、管理資産残高を増やそうという動きもある。管理資産残高には、投資アドバイザリーサービスだけでなく、カストディサービスを提供する資産も含む。投資アドバイザリーサービスというフロント業務に加え、カストディサービスというミドル・バック業務も含めて収益化を進めようとする戦略と言える。

二つ目は、投資アドバイザーの効率的な新規顧客獲得や既存顧客のグリップ力の向上である。例えば、顧客情報からニーズを分析し、規制に即したソリューションをIFA等の投資アドバイザーに提示するCRM (顧客管理システム) の活用が進んでいる。これにより、顧客に対する効率的かつ効果的なアプローチを目指そうという取り組みである。また、特定の趣味や職業、信条、ライフスタイルを持った顧客に投資アドバイザリーサービスを提供するニッチ戦略を採用するケースも見られる。顧客の細かいニーズを丁寧に汲み取り、満足度を高めることでアドバイザリー・フィーの低下圧力を緩和しようとしている。

こうした戦略は現在進行形であり、直ちに成否が決まるものではない。また、様々な戦略が登場し競争が進むことで、投資アドバイザリーサービスがさらに洗練されていけば、利用者の利便性もより高まるだろう。日本においても、「つみたてNISA」や「iDeCo」といった税制優遇制度の導入や、「顧客本位の業務運営に関する原則」の公表を背景に、金融機関は手数料の低い商品ラインナップを拡充するなど対応を進めている。今後、米国における投資アドバイザリーサービスのコスト低下圧力増加の動きは日本の金融機関にとっても他人事とは言えないかもしれない。日本の投資アドバイザリーサービスの行く末を考える上で、米国の動向から目が離せない。


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