大和総研コラム

公的年金の財政検証をチェックしよう

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2019年4月15日
  • 大和総研政策調査部 研究員 佐川あぐり

今年は「将来の公的年金の財政見通し (財政検証) 」の公表が予定されている。財政検証は、公的年金の定期健診のようなものであり、5年に一度実施される。おおむね100年先までにわたる将来の保険料収入や年金給付費の見通しといった、長期の公的年金財政の収支バランスを検証し、将来の公的年金の給付水準を示すものである。

財政検証では、100年という長期の試算を行うため、人口推計や労働力の見通し、さまざまな経済前提の基に、複数のケースが設定され、それぞれのケースについて公的年金の給付水準の見通しが示される。将来の給付水準は、所得代替率 (現役世代の賃金収入に対する年金額の水準) 50%以上というのが政府の掲げている目安であり、仮に50%を下回ると試算された場合には、現在の公的年金財政の枠組みを見直すことが法律で定められている。

例えば、前回 (2014年) の財政検証では、経済前提は8つのケースが設定された。そのうち、女性や高齢者の労働市場への参加が進み、日本経済が再生する高成長ケース (ケースA~ケースE) では、将来の年金給付水準は所得代替率50%以上を確保できるという結果であった。一方で、低成長のケース (ケースF~ケースH) では、所得代替率50%を確保できず、収支バランスを図るためには、所得代替率を50%以下に引き下げる必要があるとの結果であった。

100年先の状況を予測することは難しいため、これらの結果は幅を持ってみる必要がある。だが、内閣府が全国18歳以上の男女を対象に2018年11月に実施した「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」によると、老後の生活設計を考えたことがある人は7割近くに及び、その半数以上が、老後の生活設計において「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と回答している。近年は自助努力による資産形成への関心が高まっているが、やはり老後の生活資金は公的年金を中心にと考えている人が多い。

現在の状況から試算される将来の公的年金は、高成長となれば所得代替率50%程度の給付額が確保できて、低成長となればそれ以下の年金額しか受け取れない可能性がある、というおおまかな理解を持っておくことは、将来の老後の生活設計を立てる上で参考となるかもしれない。早めに自助努力で老後に備えるなどの意識付けにもなるだろう。今年の財政検証結果は夏ごろに公表されるとみられる。将来の公的年金の姿を理解する上でも、ぜひ多くの人々に関心を持ってもらいたいと思う。


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