大和総研コラム

新公益法人制度スタートから10年を経て

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2019年3月19日
  • 大和総研経済調査部 主任研究員 市川拓也

昨年12月で公益法人制度改革にともなう公益法人の移行期間の開始から10年が経過した。もともと公益法人とは、主務官庁の許可を経て設立される公益に関する法人であった。企業のように営利を目的としない非営利法人である。しかし、不祥事が相次いだことをきっかけに、公益法人の制度そのものを見直すことになり、新制度が創設された。新制度ではまず営利を目的としない「一般法人」を登記で設立可能とし、その中で公益性が認められる法人を「公益法人」とすることとした。「一般法人」でも公益活動はできるが、「公益法人」になれば税制優遇を受けられる。こうした新制度の開始が10年ほど前の2008年12月であった。

公益法人協会、さわやか福祉財団、助成財団センターは昨年12月付で、「公益法人制度改正提言に関する報告書」を連名で出している。これによると、まず「①改正前の民法による主務官庁制の弊害が除去され、②公益法人のガバナンスが制度的に強化されたこと、③簡易な設立手続きと運営の容易さによって一般法人の数が増大したこと等は、評価に値する」とあり、新制度のメリットを認めている。

しかし一方で、「公益法人の基礎となる一般法人法による一般法人は、2018年11月1日には69,700法人に達したが、2017年12月1日現在の統計によると、うち公益認定をうけた法人は639法人にとどまり、改正前の民法による公益法人24,317法人から公益認定を受けた8,854法人に加えても、全体として9,493法人にとどまっている」として、新制度では公益法人数が伸びていない点を指摘している。9年間で639法人であれば、年間70法人程度である。一般法人には一般社団法人と一般財団法人があるが、2017年1年間 (1-12月) の新設一般法人は、前者だけで6,379法人 (東京商工リサーチ (2018年9月6日公開)) にものぼることから、公益認定まで受ける法人がいかに少ないかがわかる。

公益認定を受けて公益法人になるには、条件をクリアする必要がある。そのうちで重要なのが財務3基準 (収支相償、公益目的事業費率、遊休財産額の保有制限) である。上記の報告書では、これらの改正について取り上げており、中でも公益目的事業の実施費用を同収入が上回らないことを原則としている「収支相償」については、撤廃を含めて言及がなされている。仮に硬直的な制度が社会全体の公益増進の妨げとなっているならば、見直しが必要である。そうした意味で10年というのは、制度の見直しを考える上での節目となる。新制度の第二ステージとして、公益増進のための制度改正の機運が盛り上がることを期待したい。


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