大和総研コラム

中国:全人代、構造改革よりも成長優先で増えるツケ

  • 国際
  • 掲載日 : 2019年3月7日
  • 大和総研経済調査部 主席研究員 齋藤尚登

3月5日に全人代が開幕し、2019年の政府経済成長率目標は前年比6.0%~6.5%に設定され、2017年~2018年の同6.5%前後から引き下げられた。

政府活動報告では、2019年の重点活動任務の筆頭に「マクロコントロールを革新・充実させ、経済動向を合理的な範囲内に確実に保つ」ことを掲げ、2017年~2018年に最も重視された「サプライサイドの構造改革」は重点活動任務から姿を消した。サプライサイドの構造改革は (1) 過剰生産能力の解消、 (2) 過剰不動産在庫の削減、 (3) デレバレッジ (負債率の引き下げ) 、 (4) 企業コストの引き下げ、 (5) 弱点の補強 (脱貧困、イノベーション重視、環境保護など) の5つから構成される。これが2019年に重点活動任務から外れたのは、2018年後半以降の景気減速の主因の一つが、行きすぎたデレバレッジによる金融引き締め効果によるものであったためであろう。さらに、政府活動報告では「リスクの防止・抑制に当たっては、ペースと度合いをしっかりとコントロールして、過剰生産能力の解消、監督管理の強化、環境保護の厳格化などによる経済収縮効果の相乗的拡大を防ぎ、経済動向が合理的な範囲内から決して滑り出ないようにする必要がある」などとして、当面は構造改革よりも成長維持を優先する姿勢を示した。

この動きは既に始まっている。2018年にインフラ投資が腰折れとなったのは、2017年後半以降、地方政府債務の急増を招きかねない、地方政府による資金調達の肩代わりや投資資金・利益の保証を中央政府が禁止したためであったが、昨年夏場以降、景気急減速回避を目的にテコ入れが始まり、政府活動報告では、2019年はインフラ投資のための地方政府特別債券が8,000億元増額されて2兆1,500億元 (約35.9兆円) とすることが発表された。

さらに昨年夏場以降の金融緩和により、行きすぎたデレバレッジは修正されただけではなく、2019年1月の社会資金調達金額の増減額は前年同月比50.5%増の4.64兆元と急増した。企業の資金調達難は景気減速要因の一つであり、その緩和は本来喜ぶべきことである。しかし、社会資金調達金額の急増はリスク含みである。負債率がさらに高まれば、将来的な金融リスクは一段と高まるためである。BIS (国際決済銀行) 統計によると、2018年6月末の非金融部門の債務残高のGDP比は253.0%に達し、その金利負担だけでも中国経済の重しになる。

結局のところ、中国政府は短期的には構造改革よりも成長率の急減速を回避することを優先しているのであるが、そのツケは将来的に、金融リスクの増大となって跳ね返ってくる可能性が高い。デレバレッジは中長期的に維持される必要がある。


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