大和総研コラム

ポスト平成も豊かであり続けられるか

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2019年1月17日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 神田慶司

2019年5月1日の改元を控え、様々なところで平成を振り返る特集が組まれている。経済面では、資産バブル崩壊後の大幅な調整や慢性デフレなどを経験し、「失われた20年」という言葉が定着するなど、閉塞感が強く厳しい時代であったと言われることが多い。

だが、平成の30年間は暗い話ばかりではない。例えば、家計消費額に見る生活水準はこの30年で着実に向上した。2018年7-9月期の人口一人当たり実質家計消費支出額は資産バブルの絶頂期だった1989年10-12月期の1.3倍である。また、家計金融資産は2018年9月末で1,859兆円と過去最高水準にある。足元 (2019年1月11日時点) の日経平均株価はバブル期に記録した最高値の約半分だが、東証一部の時価総額ではほぼ並ぶ。「バブル期」と聞くと、世の中全体が楽観ムードに包まれ、高級品が飛ぶように売れたというイメージが強いが、現在の私たちは平均的にはバブル期よりも豊かな生活を送っている。

技術進歩などが各人の嗜好やライフスタイルに合わせて消費活動を行うことを容易にした点も見逃せない。2016年度の世帯当たりエネルギー消費量は1990年度に比べて16%減少し、節約されたエネルギー代を商品やサービスの購入などに充てられるようになった。1990年代から2000年代にかけてグローバル・サプライチェーンの構築が進み、衣料品や家電、通信機器といった工業製品をより安価に手に入れられるようになった。さらにICT化の進展で、情報通信コストは劇的に低下した。30年前の通信販売の主な媒体はテレビやラジオだったが、現在の主役はインターネットである。スマートフォンやタブレット端末でいつでもどこでもショッピングできるし、住む場所にお店がなくとも、ネット上には無数の商品が並んでいる。

一方、平成の30年間で浮き彫りになった課題もある。その最たるものが社会保障負担の先送りだ。政府の構造的な財政赤字の主因は、社会保障給付費の一部が国債発行で賄われていることである。道路や橋などのインフラ整備は「投資」であり、将来世代も一定の便益を受けるため国債発行の意義はある。しかし医療・介護サービスは「消費」であり、現世代が直接に便益を受ける。その対価として現世代が負担すべき費用を将来へ先送りする現状は、私たちの生活の豊かさが、将来世代が貧しくなることで維持されていることを意味する。

ポスト平成では、生産性向上を伴う賃金の引上げや消費の活性化、人生100年時代を見据えた就労環境の整備だけでなく、将来世代も豊かな生活を送れるための社会保障負担の抜本的な見直しが必要だ。


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