大和総研コラム

日本人に「休み方改革」は可能か

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2019年1月11日
  • 大和総研調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 金融調査部長 保志泰

「今年の正月休みは9連休だった」という人も多いだろう。海外旅行を趣味とする人には絶好の機会だったはずだ。そして今度は5月1日の新天皇即位をはさんで10連休が実現する。今年、日本では土日以外が休みとなる祝祭日が17日ある。世界の祝祭日をみると、中国、タイが15日、韓国が14日などアジアで比較的多い一方、米国、フランスは10日、ドイツは9日など欧米では相対的に少ない (いずれも2019年、土日を除外。JETROサイトを参照) 。

一方で、日本では勤労者の有給休暇取得率が際立って低い。旅行サイトのエクスペディアが昨年行った調査によると、日本人の有給休暇取得率は世界19ヵ国で最低の50%、取得日数も最低レベルの10日であった。この背景として「有給休暇の取得に罪悪感がある」人の割合が世界最高の58%にのぼった。そして、上司が有休の取得に協力的という回答率で、日本は43%と世界最低だそうだ。もっとも「休み不足」と感じている人の割合は53%で比較的低く、特に50歳以上では40%にとどまっている。さもありなん、と思ってしまうところだが、これが日本人の常識と割り切るわけにはいかない。

「働き方改革」を掲げる政府は、有給休暇の取得促進をそのメニューに入れている。今年4月1日には改正労働基準法が施行され、「年次有給休暇の時季指定義務」が導入される。簡単に言えば、有休取得が少ない労働者に年5日の有休を取得させること (諸条件あり) を企業に義務付けるものである。「休みたくても休めない」職場を改善させるには、このような強硬手段を取らざるを得ないかもしれない。

しかし、本来、労働者にとっては「休みたいときに休める」柔軟性が最もありがたいのではないか。会社に休みを指定されてもどうなのか。また、国の祝祭日で長期の休暇が与えられても、混雑や価格高騰を覚悟しなくてはならない。5月の10連休を本当にありがたいと思っている人はどれだけ多いのか。

では、企業の視点から「休み方」を考えてみよう。企業は、労働者がリフレッシュして勤務中の生産性が改善することを期待するわけで、それが実現される休み方がベストということになる。もちろん、好き勝手に休まれて事業に支障を来すようでは困るが、「休みたいときに休める」ことが、従業員のモチベーションを高め、組織に対するロイヤリティを高めるという効用も期待できるのではないか。また、新規雇用や生産性向上投資を行う動機が強まり、それは企業の成長につながるものと言える。「休み方改革」を進めるためには、これまで「あまり休まない」ことを前提に組み立てられていた業務の回し方を、「一定程度休む」ことを前提とした業務の回し方へと転換することが必要となろう。それが実現できれば、労働者も他人にかける迷惑を心配せずに休みを取れるようになるのではないか。

ただし、全体として日本人が休まない理由の一つに「休み下手」もあるに違いない。つまり、「休んでもやることがない」という状況が、先の50歳以上の回答に表れた可能性だ。職場以外のコミュニティ参加や趣味など、豊かな生活を送っているのかどうかが、如実に表れるわけだ。かつては、休まずに働くことが美徳とされた時代もあったかもしれないが、現代では、とても格好の悪いことなのである。今すぐに変えるのは大きな労力が必要だろうが、世代が変われば自ずと変わっていく気がしなくもない。

筆者も、平均的な50歳代のメンタリティを持つ労働者だが、今年こそ積極的に休みを取る年にしたい。


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