大和総研コラム

リーマン・ショック10年後の海外投資環境の景色

  • 経済
  • 掲載日 : 2018年11月27日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 長内智

2018年秋のグローバル金融市場は、米国株式市場が調整局面入りし、原油価格が急落するなど、大きく動揺している。くしくも、2018年はリーマン・ショックから10年の節目にあたる。当時、筆者は外国株式の調査を担当していたが、グローバル金融市場が未曾有の大混乱に陥り、個人投資家の海外投資資金が急激に縮小するのを目の当たりにし、自分の仕事がなくなってしまうのではないかという危機感を抱いたのを思い出す。あれから、もう10年経ったのかと思うと非常に感慨深いものがある。

この10年を振り返ってみると、個人投資家の海外投資に関して注目すべき点としては、特に以下の3つが挙げられる。

まず、歴史的な金融危機以降も継続的に米国株へ投資していた場合、基本的には、日本株を上回るリターンを享受し、海外投資の成功体験となっていることである。これは、持続的に経済が成長している外国株式への分散投資が、個人の長期的な金融資産形成において有効な投資戦略の1つであることを、あらためて確認させる事例とも言える。

ただし、かつて世界最強の企業と評されたGE (ゼネラル・エレクトリック) の近年の業績および株価の凋落ぶりを踏まえると、海外投資においては、個別株リスクを避けるという視点も重要となろう。なお、同社は、世界の発明王エジソンが1878年に設立した「エジソン・エレクトリック・ライト・カンパニー」を起源にしていることでも知られる。

次に、新興国への投資は、高い経済成長率の恩恵の享受が期待できる一方で、ボラティリティの高い投資先となっている点である。リーマン・ショック後に起きた新興国投資ブームの際、多くの個人投資家は、株や債券投資によって十分な利益を上げていた。しかし、足下では、Fed (米連邦準備制度) の「出口戦略」を起因に、新興国からの資金流出が目立っており、そのことが投資パフォーマンスに対して大きくマイナスに作用している。新興国投資においては、投資額や投資時期の分散化により、リスクをうまくコントロールすることが重要な鍵を握る。

最後に、日本企業が海外展開を一段と進めた結果、日本株投資を通じて世界経済の成長の恩恵を享受しやすくなったことが挙げられる。かつて企業の海外展開と言えば、製造業が中心であったが、近年は、非製造業においても、大型M&Aを通じて海外展開を進めている企業が増えている。ただし、海外展開を進めている企業ほど、現地の金融市場と実体経済の影響を受けやすくなっている点には注意が必要だ。例えば、海外現地法人のビジネス環境の悪化で巨額の減損損失が発生すると、株価が急落する事態も起こる。

現在、株価が調整局面入りして悲観論が徐々に増えているが、昔から、市場が悲観的になっているときこそ、投資の機会があると言われる。筆者も一介の長期投資家として、リーマン・ショック後の10年を振り返りつつ、長期的な視点に立って今後の投資戦略を冷静に練りたいと考えている。


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