大和総研コラム

70歳現役社会に必要なこと

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2018年9月20日
  • 大和総研政策調査部長 鈴木準

9月17日は敬老の日だった。総務省によると、9月15日現在、65歳以上の高齢者は男性1,545万人、女性2,012万人で、女性の高齢者人口は初めて2,000万人を超えたという。約50年前の1970年10月に95万人だった80歳以上人口 (男女合計) は、1,104万人に増えた。

体力テストや歩行速度のデータを見れば、高齢者はここ10~15年で身体的に5~10歳程度若返っている。2017年の高齢者の就業者は807万人で過去最多である。65歳を高齢者と呼ぶのはもはや違和感があり、高齢者の定義を「75歳以上としてはどうか」「年齢が上から2割の人口としてはどうか」などの提案はかねてよりある。

現在、政府は生涯現役社会の実現を政策に掲げている。具体策として、70歳を超えて年金の受給開始年齢を選択可能にすることや、在職老齢年金制度の見直しが検討される見通しである。生涯現役であるためには健康第一であり、安倍首相は医療において治療だけでなく予防に重点をおくことも強調している。

人々が年齢を重ねても希望に応じていきいきと過ごせる社会を目指すことは、間違いなく正しい。ただ、それは年金や医療といった社会保障制度を見直せば実現するというものではないだろう。高齢者の定義を形式的にではなく実質的に変えるためには、経済社会のすべてのサブシステムを同時に再構築する必要がある。

例えば、働きたいという高齢者の希望が強いとしても、企業側に高齢者を活かそうという需要や発想がなければ、高齢者が働く場は生まれない。現在、定年後の再雇用などの形で高齢者就業が広がってきてはいるが、70歳までの男女が思う存分働けるという状況には程遠い。かといって、企業に対し一律的に雇用の延長を強いるようなことがあれば、ますますうまくいかないだろう。

消費市場では、その経済力と余暇時間の豊富さに期待してシニア割引が展開されている。買い物や食事、交通や旅行、娯楽施設や文化施設など、高齢になるとメリットがあるという仕組みがあちこちにある。これまでなら引退したであろう高齢者が現役にとどまる社会に移行するのであれば、特にサービス業ではマーケティングを見直す必要が出てくるかもしれない。

年金保険料の納付年数を延ばすべきという意見がある。現在、基礎年金 (国民年金) の納付年数の上限は40年 (20~60歳) だが、生涯現役社会ではそれを45年超 (20~65歳超) に延ばし、基礎年金を増額させることが考えられる。これだけ聞くと賛成が多そうだが、基礎年金の給付財源は半分が税金である。つまり、基礎年金増額のためにはおそらく消費税増税が伴うということだ。

これらはほんの一例にすぎない。まずは70歳までの現役社会を目指すとしても、そのためには、あらゆる現場での工夫が不可欠である。国民の祝日に関する法律では、敬老の日を「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」と規定している。その心を忘れてはならないが、現に社会につくしている身の回りの高齢者を称賛するという意識改革が求められるのではないか。


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