大和総研コラム

異常気象で姿を消した、あのコメの行方は・・・

  • 環境
  • 掲載日 : 2018年9月3日
  • 大和総研経済調査部 研究員 山口茜

お米のおいしい季節がやってくる。今夏は異常気象と言えるほどの酷暑で、実りに向けてラストスパートをかける稲の発育状況が気がかりだ。

異常気象とコメと言えば、かつて、異常気象をきっかけに表舞台からひっそりと姿を消したコメがある。それは、ササニシキだ。ササニシキは、コシヒカリよりもさっぱりとした味わいで、魚などに合うということで寿司のシャリとしても好まれる。かつて、ササニシキはコシヒカリと並ぶ二大品種として親しまれていたが、今では、店頭に並ぶ姿を見かけることはなかなかない。

1993年、冷夏が日本を襲った。ササニシキは気象変化に弱いという弱点を抱えているため、軒並み被害を受けて大不作となった。そして事態は米騒動へと発展した。この騒動は、タイなどからコメの緊急輸入が行われたことで知られており、記憶に残っている人も多いかもしれない。

この異常気象をきっかけに、気象変化に弱く管理に手間がかかるササニシキの栽培をやめる農家が続出し、その生産量は激減した。そして、ササニシキはコシヒカリと並ぶ二大品種という地位を失ったのである。その後、ササニシキはコアなファン向けに細々と生産されている。

そうした中、「あのおいしいササニシキの安定供給を」という声があり、気象変化に強いササニシキ作りが始まった。そして、ササニシキとひとめぼれを交配させることで、ササニシキの風味を残したまま、気象変化に強い品種が誕生した。それが「東北194号」である。

通常、コメの新品種が開発される際、最初は「上育453号」や「山形97号」といった試験番号で呼ばれ、その後、品種登録する時に名前が改められる。例えば、「上育453号」は「ゆめぴりか」に、「山形97号」は「つや姫」に、といった具合だ。

このように、通常の流れでいけば、東北194号も2012年の品種登録の際、何らかの親しみやすい名前が付けられるかと思われた。しかし、東北194号は、各生産者が個別にブランディング化しやすいようにという理由で、あえて試験番号がそのまま品種名として採用された。

そのため、東北194号は、主に栽培されている宮城県の中でも地域によって異なる名前で販売されている (「ささ結」、「いくよちゃん」、「ささゆた香」) 。また、品種名の「東北194号」のまま販売されているものもある。

それぞれの地域が栽培方法などを工夫し、独自のブランド名を付けて差別化を図るというのも一つの手だとは思うが、ブランド米が群雄割拠する時代に、この判断は果たして良かったのだろうか。2015年の本格デビューから3年が経つものの、全国的な知名度は低いと言わざるを得ない。今更難しいかもしれないが、東北194号の存在を全国に浸透させるためには、名前を統一した方が良いのではないかと思う。

ササニシキ系の復活。ドラマチックで応援したくなってしまうが、前途は多難だ。今、宮城県の一押しは今秋本格デビューする「だて正夢」だということもあり、注目もされにくい。コメ戦国時代にササニシキ系は復活を遂げられるだろうか。今後に期待したい。


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