大和総研コラム

香港 ? 日本 ? 外国人介護人材はどちらを選ぶ ?

  • 国際
  • 掲載日 : 2018年7月9日
  • 大和総研政策調査部 研究員 石橋未来

高齢化が進む香港では、介護を担う外国人材の確保に積極的だ。香港統計局によると、65歳以上人口は今後20年間で約2倍となり、65歳以上人口比率は17%から30%へ上昇する見込みである。香港には公的な介護保険制度がなく、家族や外国人家事労働者 (Foreign domestic helpers) が家事や育児の延長線上で介護を担っている。

中でも、外国人家事労働者を雇用する60歳以上の単独世帯の割合は1995年の2.5%から2016年には9.7%へ上昇しており(※1)、外国人家事労働者は高齢者介護の重要な担い手と認識されている。香港政府 (香港特別行政区政府) は介護のスキルを持つ外国人家事労働者を増やすことで、高齢化を乗り切りたい考えだ。

香港では、1960年代に経済が発展して女性の社会進出が進んだことに伴い、1973年以降、家事や育児を目的とする外国人労働者が受け入れられるようになった。共働き世帯では、富裕層に限らず、外国人家事労働者を雇うことが一般的であるようだ(※2)。香港で就労する外国人家事労働者は2016年時点で35万人 (雇用者数の約10%) であり、出身国はフィリピンやインドネシアが多い (香港統計局) 。

2018年からは、すでに国内で就労している外国人家事労働者を対象に、介護の基本スキルを習得させるためのプログラムがスタートした(※3)。さらに、これまで受け入れが少なかった国からの受け入れを増やしている。例えば、3か月間の広東語や英語、料理や基本的な介護スキル等の研修を経たカンボジア出身者を、家事労働者として受け入れ始めた(※4)。在宅介護のスキルを持つ家事労働者をタイから受け入れる計画もある(※5)。しかしながら近年、看護のスキルを持つ外国人材が、より高い賃金を求めて日本を就労先に希望するケースも生じているという(※6)

香港と同様に日本も介護人材不足に悩んでおり、外国人労働力に期待が集まる。EPAによる枠組みだけでなく、2017年11月からは外国人技能実習制度の対象職種に介護が追加されるなど、介護分野で就労する外国人材を受け入れる環境整備が進められている。これらの制度は介護分野の労働力不足への対応が目的でないとされているが、一定の要件を満たす候補生や実習生は介護職員として配置基準に算定されており、実質的に人手不足を緩和している。

さらに安倍内閣は「経済財政運営と改革の基本方針2018」で、一定の技能を持つ外国人を対象に新たな在留資格を設ける方針を示した。これまで認められていなかった「単純労働」の分野での外国人の就労が正式に認められることになり、外国人介護人材の受け入れ手段が増える。

今後、海外での就労を希望する外国人介護人材は香港と日本、どちらの国を選ぶのだろうか。あるいはどちらでもなく、別の国や地域へ向かうのだろうか。その動向に注目していきたい。


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