大和総研コラム

グローバル・バリュー・チェーンを破壊するトランプ政権

  • 国際
  • 掲載日 : 2018年6月28日
  • 大和総研リサーチ業務部長 小林卓典

開発途上国から原材料を輸入し、先進国が加工して製品を輸出するという単純な貿易パターンは遥か昔の話。90年代から活発化したグローバル・バリュー・チェーン (GVC) の深化によって各国の相互依存は強まり、世界貿易の構造はとても複雑になった。トランプ政権の関税引上げ政策は、インフレ率上昇という形で米国の消費者に跳ね返ることになるが、GVCを構成する各国の企業にも広範囲に影響が及ぶことになる。

GVCの象徴的な例として、しばしば取り上げられるAppleのiPhoneは、日本、韓国、米国などから輸入された部品などの中間財を中国で最終的に組立て輸出される。それは中国の輸出として計上されるが、中国国内で生み出された付加価値は輸出額の数%にすぎないという。これほど極端ではないにしても、中核部品を海外に依存している中国の輸出は付加価値ベースで見ると通関輸出額よりも小さくなる。 

このことをOECDが公表している付加価値貿易の2014年のデータ (TiVA: Trade in Value-added) で確認すると、コンピューターなどハイテク製品輸出および製造業全体の輸出における自国付加価値比率は、米国ではそれぞれ88.6%、77.9%、日本では82.6%、77.6%だが、部品供給を海外に依存する中国では、それぞれ48.3%、63.2%と相対的に低い水準にとどまる。そのため2014年の米国の対中貿易赤字3,431億ドルは、付加価値ベースでは2,231億ドルに縮小する。

こうした製造業の弱点を克服するために中国政府が打出したのが「中国製造2025」であり、トランプ政権は関税政策によってそれを阻止する狙いがあると言われている。

トランプ政権が中国製品を標的とする関税政策を強化するほど、直接は関係のないはずの日本など中間財の輸出国への影響が次第に大きくなる。米中の貿易戦争という勝者を生まないこの政策の帰結は、世界的な景気悪化をもたらしGVCを破壊することになりかねない。


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