大和総研コラム

「三度目の正直」となる消費税増税

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2018年6月21日
  • 大和総研政策調査部長 鈴木準

2014年4月に17年ぶりの消費税率引上げが行われた。その影響で13年度に2.6%だった実質経済成長率が、14年度は▲0.3%に低下した。ただし、税率引上げ直前の駆け込み需要とその反動減をある程度均した14暦年のそれは0.4%と、プラス成長である。そもそも、13年度の経済は期待先行による出来過ぎだった。それでも、税率8%への引上げは経済に深刻なダメージを与えたと考える人が多い。

消費税を増やさざるを得ない最大の理由は、超高齢化だ。超高齢化の下では、主に現役層に負担を求める賃金を課税ベースとする所得税は増やしにくい。生産年齢人口が減っているのだから資本に重課することは成長力をいっそう削ぐことになり、法人税は国際的な調和も求められる。静かに増やされてきた社会保険料のさらなる引上げは、可処分所得で見たときに賃上げを台無しにする。

この点、消費税は年齢や属性に関係なく、消費という生活水準や日頃の楽しみの大きさに応じてオールジャパンで負担する税である。消費税は逆進的だ (所得が低いほど負担率が高い) という指摘があるが、所得が大きい現役時に所得の一部を貯蓄し、所得が小さくなった引退後に貯蓄を取り崩して消費することを逆進的というのはおかしい。生涯で見るのではなく、一時点で見て必需的な消費に限り逆進性があるのは確かだが、それを言うなら社会保険料の方がよほど逆進的である。

家計や企業へ分配された所得への課税よりも、生産市場において商品やサービスの価格に無差別に上乗せして課税を行う方が、経済活動に中立的だと考えられる。また、消費税法で消費税収は「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」ことが明確にされており、社会保障改革と消費税率のあり方はセットで検討すべきことである。

6月15日に閣議決定された今年の骨太方針では、2度の延期を経て19年10月に予定される10%への消費税率引上げについて、極めて慎重な姿勢が示された。慎重といっても「二度あることは三度ある」ではない。確実・着実に引き上げられるよう、駆け込み需要と反動減を徹底的に平準化するという。すでに軽減税率の実施や増収分の使途変更が決まっていることに追加して政策を総動員しようというのは、やり過ぎの感じがしないではない。

もっともこれは、今度こそ「三度目の正直」であり、失敗できないという覚悟の表れだとも見える。今後20~30年先まで見通せば、10%を超えて消費税率を引き上げる必要があり、10%への引上げで仮におかしなことになれば、ポスト10%の議論ができなくなる。増税対策としての景気対策が大きすぎたり、一時的なものでなくなったりしないか注目すべきだが、それだけ消費税の重要性について認識が深まったとすれば大きな前進である。

むしろ増税の環境整備で心配なのは、社会保障を中心とする歳出改革への取組みが後退しないかである。人々が増税を納得するためには、無駄な歳出を構造的に減らす最大限の努力が不可欠である。もう一つ、歳出改革では常に「物価動向」を踏まえるとされている点も気になる。消費税増税で物価が上昇するとき、それと通常のインフレを区別せずに家計への各種給付や支払いを増やすと、その給付等には消費税の負担を求めないということになってしまう。社会保障給付を持続可能なものにするために消費税率を引き上げるのだから、その点は十分に踏まえられるべきだ。


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