大和総研コラム

中国:乗用車販売の堅調に見るリスクとチャンス

  • 国際
  • 掲載日 : 2018年6月19日
  • 大和総研経済調査部 主席研究員 齋藤尚登

2018年1月~5月の中国の乗用車販売は前年同期比5.1%増 (以下、変化率は前年比、前年同期比、前年同月比) と、堅調であった。中国では景気下支え策の一環として、排気量1.6L以下の乗用車の車両購入税が2015年10月~2016年末までの期間限定で価格の10%から5%に半減され、2016年の乗用車販売は14.9%増と急増したが、車両購入税率が7.5%となった2017年は1.4%増にとどまった。通常税率の10%に戻った2018年は、需要先食いの反動で前年割れとなるとの見方もあったが、既述の通り、乗用車は予想以上に売れている。特に、4月は11.2%増と、2016年11月以来の2桁増 (旧正月の時期のずれの影響により統計が大きくぶれる1月~2月は平均値で比較) となり、5月も7.9%増と堅調であった。

この背景のひとつとして、中韓関係の改善を挙げることができる。中国と韓国の関係は、米ミサイル防衛システムTHAADの韓国配備をきっかけに急速に悪化し、韓国車 (合弁による現地生産+輸入) の中国国内販売は2017年3月~6月には半減以下となるなど大きな影響を受けた。2017年1月以降の前年割れは2018年3月に終止符を打ち、4月は倍増を記録し、5月も72.0%増となった。5月の乗用車販売全体の増加率7.9%に対する韓国車の寄与度は2.2%ポイントであった。
外交・政治関係の悪化が乗用車販売に如実に表れたのは、2012年9月以降 (尖閣諸島をめぐる問題) の日本車と同様であり、当時、中国における日本車販売も1年にわたり前年割れを余儀なくされた経緯がある。政治・外交問題と経済問題のリンケージの深さは、中国ビジネスの大きなリスク要因でもあることが改めて示された格好である。

乗用車販売堅調の背景として、さらに特筆されるのは新エネルギー車の販売急増である。「中国製造2025」は中国が製造大国から製造強国への移行を目指す国家戦略であり、新エネルギー車は10大重点分野の一つに掲げられ、その製造・普及促進のために政府から補助金が支給されている。凄まじい交通渋滞や環境汚染問題への対応として、車のナンバープレートの発行を制限する都市が相次ぐ中、新エネルギー車は制限の対象から外すといったインセンティブを供与する地方政府もある。
こうした状況下で、補助金の不正受給問題に揺れた一時期を除き、新エネルギー車の販売は好調が続いている。新エネルギー車は生産・販売開始から日が浅いのだが、倍々ゲームが続くうちに、足元では乗用車販売全体の動向に無視しえない存在感を持つようになったのである。5月の乗用車販売7.9%増に対する新エネルギー車の寄与度は2.6%ポイントに達した (ちなみに、2017年5月の寄与度は0.7%ポイントだった) 。
1月~5月の新エネルギー車の販売上位を見ると、電池・自動車メーカーのBYD、北京自動車集団傘下の北汽新エネルギー、上海自動車集団の上海自動車など、補助金政策の恩恵をフルに享受した中国地場系が並ぶ。2017年9月に、中国政府は2019年の自動車製造・販売の10%を新エネルギー車が占めることを自動車メーカーに義務付ける規則を発表した。これを受けて、日本勢も新エネルギー車への取り組みを加速している。やや出遅れた日本勢が、今後どう巻き返していくのかに注目している。


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