大和総研コラム

ジョークで読むロシアサッカーワールドカップ

  • 国際
  • 掲載日 : 2018年6月13日
  • 大和総研ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野泰夫

いよいよ明日 (6月14日) からロシアでサッカーワールドカップ (以下、W杯) が始まる。歴史に残る初のW杯開催に、ロシアはお祭りムード一色である。ただ、ロシア代表チームへの国民からの関心は薄い。FIFAランキング70位のロシア代表 (日本代表は61位、2018年6月7日時点) に対し、ロシア国内メディアは、グループリーグ突破すら難しいとの見解で一致している。明日行われる対サウジアラビア代表との開幕戦も、引き分けすら難しいのでは、と手厳しい。

Webサイトやツイッターに掲載されている、最新のアネクドート (ロシア小咄) では、連日、ロシア代表への痛烈なジョークで埋めつくされている。たとえば、

「ブラジルは“ネイマール”に頼り、ポルトガルは“クリスティアーノ・ロナウド”に、そしてロシアは“奇跡”に頼る」

など、そのパターンには、枚挙にいとまがない。

ただ2014年から経済制裁が続くロシアでは、W杯という国際行事を通じた各都市のアピールと経済効果を期待していることも確かだ。特にモスクワやサンクトペテルブルクなどの大都市よりも、地方都市への効果が大きいといわれている。

日本代表の初戦で、コロンビア代表との試合が行われる、モルドヴィア共和国の首都サランスクを訪れたことがある日本人は少ないだろう。モスクワから南東約600kmに位置するこの地方都市は、人口約30万人と、試合が開催される11都市の中で最も小さい (モスクワやサンクトペテルブルクに住むロシア人ですら、ほとんど行ったことがないという) 。ジョーク好きなロシア人の間でも、全くというほどアネクドートの対象にならない田舎町である。ただそれが、W杯グループリーグのたった4試合が行われるだけで、大会期間中に約3万人の観光客が訪れるといわれている (人口の約10人に1人が観光客になる計算だ) 。ビジネス進出のための視察団も急増中であり、英国でも、この町の特集が経済紙で組まれるなど、活気づいている。

ただ、初めて訪れた観光ブームのため、宿泊施設の数は足りるはずもなく、約3万人の観光客をどう受け入れるかが課題とされている。旧ソ連時代のかなり古いアパートホテルを1泊1,000ドル以上で提供する宿泊業者が多発するなどの問題も生じているようだ。行政は、観光客になるべく良い印象を持ったまま帰ってもらうことに躍起で、悪徳業者の摘発にも積極的に乗り出しているという。

無論、今回のW杯では、国外からも多くのファンやVIPの訪問が予定されており、テロなどの治安面に対してもロシア政府は万全な対応をしていると強調している。一方、厳しい制裁下にもかかわらず、スタジアムだけでなく、今回から導入されるビデオ判定 (ビデオ・アシスタント・レフェリー) を行う最新設備も予定通り完成したなど、経済危機を克服したことへのアピールにも余念がない。

ただ、このようなアネクドートも発見した。

「ロシアでは珍しく、全てのスタジアムが予定通りに完成した。ロシア代表選手は試合が予定通り行われ、プレーが避けられないことに、非常にショックを受けている」

観戦に行く日本人は、サッカーだけでなく、ぜひロシア人のジョークも楽しんでもらいたい。


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