大和総研コラム

家庭からの化学物質の排出

  • 環境
  • 掲載日 : 2018年6月12日
  • 大和総研政策調査部 主任研究員 伊藤正晴

我々の日常生活は、化学物質を原材料にしたさまざまな製品によって支えられているが、その製品の製造や使用の際に化学物質が環境中に排出され、廃棄物にも化学物質が含まれている。化学物質には、人の健康や環境への影響が懸念されるものも少なくないため、その排出削減に取り組む必要がある。

その出発点として、環境リスクが懸念される化学物質がどの程度環境中に排出されているかを把握するために、平成11年に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」が公布され、この法律に基づいてPRTR (Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度) が導入された。この制度では、一定の条件に合致する事業者が届け出た化学物質の排出量 (届出排出量) と、廃棄物などとして事業所外や下水道へ移動した量 (移動量) を把握するとともに、届け出の対象外である事業者、家庭、自動車などの移動体からの化学物質の排出量 (届出外排出量) を推計し、公表している。このPRTRデータにより、毎年どのような化学物質が、どの排出源から、どれだけ排出されているかを知ることや、化学物質の排出削減の状況などを確認することができる。

平成30年3月に公表された経済産業省、環境省「平成28年度PRTRデータの概要」によると、平成28年度の届出排出量は15.1万トン、移動量は22.4万トンであった。排出先の内訳は、大気への排出が13.7万トンで、届出排出量の90%を占めている。移動量については、事業所外への廃棄物としての移動が22.3万トンで移動量全体の99%を占めている。

届出外排出量は24.7万トンと推計され、その内訳は届け出の対象外である事業者が13.3万トン、家庭が4.6万トン、移動体が6.9万トンとなっている。また、移動体では自動車が5.8万トンで、移動体からの届出外排出量の85%を占めている。

10年前の平成18年度は、届出排出量が24.5万トン、届出外排出量が32.1万トンであった。そして、家庭が5.0万トン、移動体が11.3万トンと推計されていた。届出対象の化学物質の変更や、届出外排出量の推計の見直しなどがあるので、経時的な数値を単純に比較することはできないが、届出排出量や移動体からの排出量などに比べて、家庭からの排出量はこの10年間であまり減っていない。

平成28年度の家庭からの届出外排出量の上位2物質は、台所用や洗濯用の洗剤などに使用されているポリ (オキシエチレン) =アルキルエーテル(※1)が1.8万トン、防虫剤や消臭剤に使用されているジクロロベンゼンが0.76万トンとなっている。届出排出量と届出外排出量の合計での排出量上位物質を見ると、ポリ (オキシエチレン) =アルキルエーテルは排出量が2.3万トンで4位、ジクロロベンゼンは0.77万トンで10位となっているが、これら物質のほとんどが家庭から排出されていることになる。特に、10年前と比べてジクロロベンゼンの排出量は大きく減っているのに対し、ポリ (オキシエチレン) =アルキルエーテルは減っていない。

「持続可能な開発目標 (SDGs) 」の目標12のターゲットの一つにもあるように、化学物質の管理の強化や環境への排出を減らすことが求められている。PRTRデータを見ると、全体的に化学物質の排出量は減ってきているが、家庭からの排出量については削減の度合いが小さいようである。家庭からの化学物質の排出は、個人や家庭単位では少量であろうが、全国で推計すると4.6万トンという、とても無視できない量になっている。市民生活においても化学物質の排出量を減らす努力が必要であろう。まずは一人ひとりがどのような化学物質を使っているかを意識することから始めてみてはどうか。

  • ※1アルキル基の炭素数が12から15までのもの及びその混合物に限る。

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