大和総研コラム

消費低迷というパズルを埋める2つの将来不安

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2018年5月30日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 長内智

日本経済は2018年1-3月期において、実に約2年振りとなるマイナス成長を記録し、長期的な経済成長の動きが一服した。また、日本のGDP統計では、1-3月期の経済成長率が加速するというアノマリーが2012年から2017年にかけて6年連続で観察されていたが、それも今回で途切れることとなった。経済成長率がマイナスに転じたのは、一時的な要因によるところが大きいため、過度な懸念は不要だが、最大の需要項目である個人消費の不振が目立つ点はやや気がかりだ。

個人消費の低迷が続いているのは、その原資となる実質可処分所得の伸び悩みが最大の原因であり、近年は、社会保障制度に関わる将来不安の影響が指摘されるケースも増えている。これは、財政悪化に伴う将来的な年金支給額の減少や、医療・介護費の増加に対する懸念を背景に、安心した老後生活を送ることができないという漠然とした不安が個人消費を抑制しているという仮説である。

筆者も、将来の老後不安が個人消費の重石になっていると考える一方、それだけでは不十分な面もあるとみている。例えば、2014年の消費増税後に個人消費が「想定外」の落ち込みを示したことを思い起こしたい。もし、消費増税によって財政規律が改善に向かい、将来不安の緩和を通じて個人消費を押し上げるのであれば、想定外の落ち込みは避けられたのではないかという疑問が生じる。また、日本はすでに4人に1人以上が高齢者であり、その方々にとっての老後生活とは、遠い将来でなく、まさに目の前の現実だ。

こうした問題に対しては、将来不安を「長期」と「短期」の2つの視点で捉えることが有益だと考えている。前者は、主に老後不安が該当し、後者は、商品の値上げや実質賃金の減少という比較的目先の懐具合の不安に起因するもので、消費者の節約志向にも影響を及ぼす。この視点に立てば、消費増税の影響は、「長期」の将来不安の解消につながる一方で、「短期」の将来不安を高めることで個人消費を下押しすると整理できる。また、生鮮食品の高騰や値上げラッシュは、節約志向の高まりを通じて消費者の財布の紐をきつく締める。

今後、日本経済再生の鍵を握る個人消費を本格的に回復させるためには、財政規律の維持に努めることで「長期」の将来不安を緩和させると同時に、持続的な賃上げの実現や急激な値上げ緩和措置を通じた「短期」の不安解消を目指すという、狭く険しい道を進むことが求められている。その際、年金受給者に対しては、臨時給付金の支給などの政策対応で「短期」の将来不安を緩和させる必要が生じる可能性もあるだろう。そして、この2つの将来不安という視点は、次回の消費増税を巡る議論においても欠かせない。


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