大和総研コラム

地域銀行の証券子会社設立の有効性と課題

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2018年5月24日
  • 大和総研金融調査部 主席研究員 内野逸勢

日本銀行から「地域銀行の証券子会社の経営動向」という日銀レビューが5月に公表された。その中では、地域銀行の証券子会社の設立が着実に増えていることと、証券子会社の経営が総じて軌道に乗っていること、資金利益が減少する中で連結ベースでの利益への貢献が増えているとして、証券子会社設立の有効性が語られている。この“有効性”を維持していく上での課題は何であろうか。

第一に、銀行による銀証連携の図り方である。上記日銀レビューでは、親銀行がマス顧客を、証券子会社が富裕層をマーケティングの対象として、顧客セグメントを棲み分ける銀行が多い、としている。この棲み分けよりも、親銀行と証券子会社が一体となって、まずは既存のコア顧客層を囲い込むことが必要であろう。棲み分けをすると、コアの顧客の囲い込みが疎かになる可能性が高い。さらには単に預り資産を増やせばいいということになりかねない。銀行にとって収益性の相対的に高いコア顧客層を囲い込むこと、つまり“収益性の高い預り資産”を積み上げることにプライオリティを置くことが重要であろう。

第二に、収益性の高い預り資産を積み上げた上で、更なる収益機会を追求するために、マス顧客層への対応が求められていく。収益性が相対的に低いマス顧客層へのリーチには、コストを低減させ生産性を高めていくことが必要となる。証券仲介、証券窓販を含めた地域銀行グループ全体の証券ビジネスの体制を戦略的に考えていく必要があろう。これまでの証券ビジネスの体制でよいのか、人員配置、ミドル・バックの業務内容やシステムを含めて再検討する必要があろう。

第三に、今後、新たに証券子会社を設立する地域銀行の場合、設立当初からコスト削減のブレークスルーを地域銀行グループ全体として求める体制を検討する必要があろう。上記日銀レビューでは、近年は、総合金融サービス業としての高い経営の自由度を確保できることから、単独新設が増えているとしている(※1)。この場合、例えば、証券子会社自体は渉外営業員を抱えないオンライン証券子会社にし、人的、システム的にも軽量化を図る、生産性を向上させるために顧客分析を飛躍的に高めるデータサイエンティストの活用などの施策を検討することが有効であろう。

地域銀行の本業 (貸出・手数料ビジネス) の収益状況は厳しさを増している。先月4月に金融庁から公表された「地域金融の課題と競争のあり方」 (金融仲介の改善に向けた検討会議) では、各都道府県で本業 (貸出・手数料ビジネス) の収益が、1行単独であっても不採算な都道府県が23という試算を出している。上記のように単独で検討するのではなく、広域で考える視点も必要になってくることも考えられよう。証券子会社の戦略的な活用に向けた迅速な対応が、より一層求められていると言えよう。

  • ※1上記日銀レビューによれば、2018年3月末時点で営業している23社の設立の形態は、既存証券の買収型が7社、共同出資型が6社、単独新設型が10社、となっている。

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