大和総研コラム

次の景気後退に備えよう

  • 経済
  • 掲載日 : 2018年5月21日
  • 大和総研経済調査部 エコノミスト 小林俊介

やや旧聞に属するところになるが、3月のFOMCで示された見通しは大きな問題を孕んでいたと言わざるを得ない。まずドット・チャート (FOMCボードメンバーの利上げ見通し) において、逆イールドの姿が鮮明化している。長期均衡水準のFF金利見通し中央値は2.9%となる一方、2020年末の見通し中央値は3.4%となった。長短金利の逆転は金融機関の貸し剥がしを誘発するものであり、とりわけそれが短期金利の上昇によってもたらされる場合、景気への下押し圧力は大きくなる。従って、もし今後FOMCメンバーの予想通りに金利が動くとすれば、恐らく遠からぬ将来に実体経済の拡大は止まる。実際、過去50年間を振り返ると、一度の例外もなく、長短金利の逆転後には必ず景気後退が訪れている。

そしてこの懸念を強めるのが今回提示された経済見通しだ。失業率は2019年に3.6%まで低下する見通しとなっているが、長期的には4.5%程度に上昇することが見込まれている (いずれも中央値) 。これを素直に受け取ると、やはり近い未来に景気後退が起こることが見込まれているということになる。そしてその発端が先述した逆イールドによるものだとすれば、Fedは自ら景気後退を起こすと、公式に宣言していると言っても過言ではない。

そもそも論になるが、米国の実体経済は、アグレッシブな利上げが必要な状況にない。劇的な非労人口の増加が示すように、米国経済には非常に大きなスラックが未だ温存されている。従って景気の過熱とインフレ高進が懸念されるような状況には程遠い。そして生産性の伸び率も今のところ低位安定している。だからこそ、先述したように、FOMCメンバー自身も期待物価上昇率と生産性の和で近似される長期均衡水準のFF金利見通しを2.9%と控えめに予測しているとも言える。

にもかかわらずFedが無理筋な利上げを進める理由は、端的に言って米国でバブルが発生しているからであり、そのガス抜きをするためだ。米国企業の債務残高は、例えばGDP比でみてITバブル崩壊前夜やリーマン・ショック前夜と遜色ない水準にまで到達している。これは過去の量的緩和により社債コストが抑制され、株式資本コストを下回り続けた結果として自社株買い・企業買収が積極的に行われてきた=企業債務のレバレッジがかかり続けてきた結果である。

こうした安易なリスクテイクを抑制するために金融「規制」が必要だとイエレン前議長は考えていたようだが、トランプ政権下で金融規制は緩和の方向で調整が進んでいる。かくしてバブルのガス抜き「だけ」を目的として金融引締めが行われることになったが、このことが実体経済に無用の下押し圧力をかけることは言うまでもない。次の景気後退への備えを始めるべき時が来た。


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