大和総研コラム

米国のフィデューシャリー・デューティーの議論は何処に

  • 国際
  • 掲載日 : 2018年5月2日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター 主任研究員 鳥毛拓馬

米国では、証券会社 (ブローカー・ディーラー、以下BD) に「投資アドバイザー」と同様のフィデューシャリー・デューティーを課すか否かという議論が約10年続けられている。
個人向けの「投資アドバイザー」は、1940年投資顧問法により、顧客に対してフィデューシャリー・デューティーを負うと解されている。一方、BDは、助言行為がBDの業務に単に付随的で、かつ、助言行為に対して特別の報酬を受けない場合には、「投資アドバイザー」ではないとされ、直ちに顧客に対してフィデューシャリー・デューティーを負うものではないと解されている。しかし、①投資家の立場からすれば、投資アドバイザーとBDは、通常、同様のサービスを提供している者と見られ、両者の差異は不明確であることや、②両者の責任の差により投資家保護の程度が異なることが、多くの投資家を混乱させるなどと指摘されていた。2010年に成立したドッド・フランク法では、SEC (米国証券取引委員会) に対して、BDに投資アドバイザーと同様の行為基準 (standard of conduct) を定める権限が付与されていた。このため、SECは、BDにもフィデューシャリー・デューティーを課す規則を定めるものと思われていた。
このような中、2018年4月18日にSECはフィデューシャリー・デューティーに関わる新たな規則案をついに公表した。この規則案は、BDが投資推奨をする際に、顧客の最善の利益となる行動をすることを義務付けている。ただし、その義務の範囲は限定されており、投資アドバイザーと同様のフィデューシャリー・デューティーを課すことにはなっていない。このため、規則案採決の際に唯一反対した民主党系のスタイン委員は、「新規則は現行規制と大きく変わるものではなく、投資家を保護するというよりはむしろBDを保護するものである」との声明を発表している。

一方、仮に厳格な規制がBDに課されると、BDは利益相反となる推奨を避けるために、より低コストかつ低リスクのETFやインデックス投資といったパッシブ投資に投資家を向かわせることが予測され、投資家の金融商品へのアクセスの幅が狭められるといったことも指摘されている。
SECは、今後、規則案に対する意見を公募し、その意見を基に規則案の修正を行い完成させることになるが、賛成派、反対派両者から膨大な意見が提出されるものと予想される。今後の修正により、当初の規則案から大きく変更される可能性もある。最終的に、どのような内容の規則になるのか、引き続き、議論の行方に注目したい。


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