大和総研コラム

投資リスクとしてのセクハラ・パワハラ

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2018年3月22日
  • 大和総研政策調査部 主任研究員 鈴木裕

セクハラやパワハラが企業にとって大きなリスク要因の一つであることに異論はないだろう。米国エンターテインメント業界の状況を見れば、リスクが顕在化したときの影響は相当のものとなるとわかる。わが国においても、ハラスメントに起因すると疑われる従業員の自殺や長時間残業・サービス残業によって、社名を明らかにされた企業への信頼感は大きく揺らいだ。公共プロジェクトの入札から排除されるなどの損失も生じよう。被害者に対するケアや再発防止策の策定は当然だが、株価への影響もあり得るのだから、投資家対応も必要になってくる。サイバーセキュリティと同様、多くの企業が直面せざるを得ない課題だ。

投資家の視点からは、投資先企業がセクハラやパワハラ問題を起こさず、万一問題が生じたとしても迅速・適切に対処できる準備を整えているかが関心事となろう。経営リスクに関する問題は、投資家と企業の対話テーマになっているのだから、セクハラ・パワハラに対処する企業の方針が問われる可能性がある。サイバーセキュリティについては、経営ガイドラインが公表されており (※1) 、セクハラやパワハラ問題の参考になる。経営ガイドラインでは、経営者がまずは認識すべきこととして、次の3点を挙げている。

・経営者のリーダーシップ
・サプライチェーン全体への目配り
・情報開示など、関係者との適切なコミュニケーション

セクハラ・パワハラについても基本的には同様に考えてよいだろうが、サイバーセキュリティと異なるのは、経営者自身がリスク要因になりうるところだ。経営者にセクハラ・パワハラ問題が生じた場合、取締役会は適切に対処できるのか、解任や辞任を求める基準・手続きはあるのか、解任・辞任後の処遇 (退職慰労金等) はどうするか、また、事実はどのように開示すべきなのか、経営者交代の事実だけを公にするのか、背景・経緯はどうかなど、考えなければいけないことは多い。対処を誤れば、セクハラ・パワハラに鈍感な企業としてレピュテーションを一層下げることになる。株価への影響を最小限にとどめるためにも、適切な対処方針を持っているかが問われるだろう。

セクハラ・パワハラ問題が機関投資家にとって厄介なのは、投資先企業の株価が下がることで損失を被るだけではない。談合や偽装などと同様に社会規範に反する企業に投資をしていたことによって、機関投資家自身のレピュテーションを下げる危険がある。サイバーセキュリティは、主に外部からの攻撃だが、セクハラ・パワハラは内部の腐敗だ。伝統と信頼のある機関投資家がパワハラ・セクハラ企業に投資をしていたとなれば、道徳的非難を受けかねないし、顧客も離れていくかもしれない。機関投資家という組織内部のセクハラ・パワハラ対策だけでなく、ポートフォリオの中に問題を起こした企業が出た場合の対応方針をも検討しておく必要がある。


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