2018年2月16日は中国において春節 (旧正月) に当たる。春節に際し、中国では家族そろって新たな一年を祝う。家族全員で真っ赤な正月飾りを飾り付け、爆竹を鳴らして邪気を払い、餃子を食べて豊穣を祈ることは春節の恒例行事である。
このほか、春節には新しい洋服を着て、新たな一年を迎えるという文化もある。中国人の友人からは「子供時代は新しい洋服を着ることができる春節が楽しみで仕方がなかった」という話を聞いたことがある。現在においても春節に備えて新しい洋服を買う中国の人は多く、変わらぬ伝統と言える。
しかし、変わった部分もある。中国では、経済発展とともに所得は増加し、高級品をお金に糸目を付けずに購入できるようになった人々が多く誕生した。北京や上海といった大都市の繁華街では、春節前に季節限定のハイブランドの洋服やアクセサリーを購入する人でにぎわう。2017年の世界の高級品市場約160兆円のうち、約1/3は中国の人々が購入しているとの報道もある。
春節時には、日本の百貨店も中国からの訪日客向けに販促イベントを開催し、化粧品売り場などでは中国語であふれている光景も珍しくない。「訪日外国人消費動向調査」 (観光庁) によると、2017年の中国の訪日旅客の一人当たりの旅行支出は前年比で若干減少したものの、約23万円と国・地域別では最高水準である。国・地域別の訪日旅客数も最多であることから、中国からの訪日旅客の消費額は合計で約1.7兆円に及ぶ。一人当たりの消費額こそ頭打ちになった可能性はあるが、中国からの訪日客のすそ野は広がりを見せている。
中国の人々の高級品購入は個人に留まらず、中国企業においても進んでいる。旧正月と時は同じく2018年2月、中国山東省の山東如意科技集団有限公司が、スイスの高級ブランド「バリー」の株式過半数を買収した。また、同時期に、中国企業がフランスの有名クチュールメゾンを買収するとの報道もあった。
中国の人々の購買力を踏まえれば、中国国内向けに高級品の供給を増やすために、中国企業が海外のハイブランドを買収することも理解できる。他方で、企業は「新しい洋服」のように春節が来る度に買い替えられるわけでもない。中国企業はハイブランドの「爆買い」を通じて、シナジーの創出による企業収益の増加を実現できるかが問われる。
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