大和総研コラム

不人気な税制改革

  • 国際
  • 掲載日 : 2018年1月17日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター エコノミスト 橋本政彦

アメリカでは、2017年12月22日にトランプ大統領が署名したことで、およそ30年ぶりとなる大規模な税制改革が成立した。2017年1月のトランプ大統領就任以降、政権は政策運営に苦労してきたが、年末になって漸く目に見えた成果を得ることとなった。

だが、今回の税制改革は、アメリカ人には今のところあまり評判が良くないようである。CNNが税制改革成立直前の2017年12月14日~17日に行った世論調査によれば、税制改革を支持した人は全体の33%に留まり、全体の半数を上回る55%の人は反対すると回答した。別の世論調査でも総じて今回の税制改革は望ましくないという意見が多く、法案成立後、今回の税制改革を“Unpopular”と形容するマスコミ報道も少なくない。

今回の税制改革が不人気である要因としては、ニューヨーク州やカリフォルニア州など州税の高い地域では、増税になる個人が多いと指摘されていることや、高所得層に有利な内容に対する不満が考えられる。しかし、そうした内容以前の問題として、国民に内容が十分理解されていないことが、不人気の根本にはあるとみられる。

税制改革のうち個人関連税制に限って見ても、税率の変更に加えてさまざまな控除の見直しなどが盛り込まれており、変更点は非常に多岐にわたる。トランプ大統領が公約としていた税制の簡素化が実現したとは言えず、制度変更後の納税額を家計が現時点で判断するのは非常に難しい。結果的に減税になる家計でも、その恩恵が実感されるまでには時間を要するだろう。

アメリカでは、収入があった人は原則、毎年の確定申告が義務付けられており、税制改革による各家計への影響が確定するのは、2018年分の確定申告のタイミング、すなわち2019年1月以降となる。それまでは今回の税制改革に対する家計の評価は定まりづらいのではないか。税制改革の成立後も、トランプ大統領の支持率に目立った上昇は見られず、低位での推移が続いているが、2018年に実施される中間選挙に向けた有権者へのアピール効果は限られる可能性があろう。

また、今回の税制改革は、限界消費性向の低い富裕層向けに恩恵が集中することで、そもそも個人消費を刺激する効果が限定されるとみられるが、減税が実感されづらいということもその効果を抑制する一因になり得る。さらに、2018年分の確定申告までは家計は消費に対して慎重になる可能性があり、個人消費の押し上げ効果の発現までに時間が掛かるリスクにも注意が必要であろう。


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