大和総研コラム

日本と東南アジアのリーダーたち

  • 国際
  • 掲載日 : 2017年11月6日
  • 大和総研経済調査部 エコノミスト 増川智咲

日本の秋は、政治に揺れた。衆議院解散、新党結成、そして総選挙を経て、これからは新政権による政策運営の行方が注目されている。海外からの注目度も高く、Financial Times紙でも、日本の総選挙に関する記事が多く見られた。特に、希望の党を立ち上げた小池百合子氏関連の記事は多かった。「日本は人柄でなく、政策を議論すべき (Japan needs to debate policy, not personality) 」という記事では、小池氏を「リスクを取る人物 (a risk taker) 」「カリスマ的な東京都知事 (the charismatic governor of Tokyo) 」と紹介すると同時に、彼女の政策に特段新鮮さが見当たらないとも指摘していた。様々な制約やしがらみが渦巻く中、現実路線と自身のオリジナリティーのバランスを取ることは、各国の政治家にとって共通の課題だろう。

東南アジア諸国ではどうか。同地域では、昨年までに大きな選挙が実施されており、2017年は各政権の政策運営手腕が問われる年となった。
ミャンマーでは、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟 (NLD) 政権が発足して2年目となり、まさにその成果が求められる年であった。カリスマ的な存在として国内外から注目を浴び、軍事政権時代からの変革を期待される存在である。しかし、ロヒンギャに対する迫害への対応に関しては国際社会から強い非難の声が上がった。軍と一定の距離を保ちつつ、協力関係を築きたいと願う同氏は、舵取りが難しい状況に追い込まれたようだ。その対応の遅れが被害を拡大させ、国際社会では問題解決に消極的と批判されることになった。

他方、当初のキャラクターを修正しながらも確固とした支持基盤を得ているリーダーもいる。フィリピンのドゥテルテ大統領は、2016年の就任当時、歯に衣着せぬ物言いで「型破りの大統領」とも呼ばれ、国内では剛腕の発揮が期待された。特に、外交政策では攻撃的な一面があり、「米国との決別」発言の際には対米関係が一気に冷え込むのではないかとの懸念が生じたほどである。しかし実際は現実主義であるようで、その破天荒な振る舞いは最近になって一気にトーンダウンしている。とはいえ、国内では、治安改善という点で高く評価されており、同氏の政策基盤は強化されているようだ。

そして2018年には、2014年5月のクーデター以降軍政が敷かれていたタイで選挙が行われる。民政移管のスケジュールが大きく遅れていたが、プラユット首相は10月に入ると、2018年11月に選挙を実施する旨を発表した。これまでタイでは、多数派であるタクシン派が総選挙を経て政権を樹立した後、反タクシン派によって打倒される場面が繰り返されてきた。タクシン政権期の経済政策である「タクシノミクス」を追求しながらも、実際は軍や反タクシン派との対立回避を優先してきたインラック前首相でさえ、最終的にはこの対立に巻き込まれる形で首相の座を奪われることになった。新首相は、軍政時代に成立した憲法の下、根強く残るタクシン・反タクシン間の対立の矢面に立たされるわけである。混乱なく、4年以上続く「政治の空白」を埋めるリーダーが現れるのか。世界が注目している。


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