大和総研コラム

返礼品志向のふるさと納税は地域産業の延命策か、それとも育成策か

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2017年11月2日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 鈴木文彦

ふるさと納税の返礼品として「牛肩ロース焼肉用」が届いた。これが妻と娘に大好評。筆者は故郷の子育て施策を応援したいと思ったが、次は山形のさくらんぼがいいとか、お刺身食べたいとかの声に押され、ふるさと納税のポータルサイトで商品を検索し、次の納税先を決めた。今は「ふるさとチョイス」や「さとふる」などの専用サイトが充実し、ほとんど通販感覚で納税することができる。あくまで個人的な感想だが、ふつうに納税して何も貰えないことを考えると、ふるさと納税にはたいへんなお得感があるのは否めない。

故郷を含め地方自治体の意欲的な取り組みを応援するのがふるさと納税の趣旨で、返礼品はそのお礼の気持ちが形になったものだ。少なくとも納税の対価ではない。とはいえ、返礼品に惹かれて納税先を選ぶケースは多く、こうした傾向に眉をひそめる向きもある。増収目当ての返礼品競争の過熱を懸念して、返礼品の金額は納税額の3割以下とするよう総務省の通知が4月に出た。返礼品に対するキャッシュの流れに着目すれば、ふるさと納税は、ふるさと納税という名の寄附金を財源に、自治体が地元企業に返礼品を発注するシステムだ。あくまでひとつの見方だが、ふるさと納税の「お得感」を利用し、パッとしないご当地商品への発注を増やして地元企業を延命しようとするものであれば地域活性化として得策ではない。

他方、返礼品重視の取り組みは、やり方次第で地元商品の販路拡大ひいては地元企業の育成の役に立つ。筆者は他にも何か所かふるさと納税をしたが、返礼品の中にはふるさと納税ではじめて知ったものもあった。このように、ふるさと納税がなければ知られなかった商品もあるはずだ。東京のデパ地下にあってもおかしくない逸品にもかかわらず、宣伝力不足でほとんど無名の地元商品を全国の消費者に知らしめたふるさと納税の功績は大きい。

結局、返礼品志向のふるさと納税が地域産業の延命策かそれとも育成策かは、ふるさと納税による「特需」を継続的な売り上げにつなげることができたか否かにかかっている。全国クラスの実力を持ちながら宣伝力不足によって地方でくすぶる地元ブランドの銘品が、ふるさと納税をきっかけに地元発の全国ブランドの銘品に成長するのが最善のシナリオだ。ふつうの品質、ふつうの価格でも地元消費だから成り立つ「ご当地」商品は、ふるさと納税のお得感をもって売れ行き好調になっても後が続かない。いずれふるさと納税のブーストなしでも安定した販売水準を維持できるよう品質の向上を図るのが次善のシナリオとなる。

そのためには、ふるさと納税と並行して、ご当地商品や地元ブランドの銘品を全国ブランドの銘品に育てる支援体制の構築が必要だ。それまで不十分だった安定供給や販売促進面の課題を解決しなければならない。例えば岩手県北上市のふるさと納税業務を運営する地域商社「きたかみチョイス」は、返礼品を提供する地元中小事業者を販路開拓や商品開発などで支援している。また、高知県奈半利町はふるさと納税の返礼品と同じ商品を注文できる通販サイト「なはりの郷通販サイト」を立ち上げた。こうした取り組みを拡大し、成功事例を積み重ねることが、ふるさと納税が地域活性化の有力な策と認められるようになるのに大切なことだ。


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