大和総研コラム

成人年齢はなぜ「20歳」なのか

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2017年10月16日
  • 大和総研金融調査部 研究員 小林章子

10月22日、衆議院解散に伴う第48回衆議院議員総選挙が行われる。今回の選挙は、投票を行うことができる選挙権年齢が満20歳以上から満18歳以上に引き下げられてから初めて行われる衆議院議員総選挙であり、新たに選挙権を与えられた18歳・19歳の若者の投票動向にも関心が集まっている。
この解散・総選挙の陰で先送りされた改正議論がある。それは、何かと選挙権年齢の引き下げと関連づけて語られることが多い「成年年齢 (成人年齢) の引き下げ」である。この成人年齢の引き下げについては、2017年秋の臨時国会に18歳に引き下げる改正法案が提出されるとの報道があったものの(※1)、その臨時国会で衆議院が解散されたため改正法案は未提出のまま、改正議論は選挙後の国会に持ち越されることとなった。

日本では民法上、成人年齢は満20歳とされているが、そもそも、「20歳」とされたのはなぜだろうか。これについては、現行民法が制定される段階での議論が参考になる。現行民法の起草者の梅謙次郎博士は、制定のための委員会において、太政官布告や慣習では満20歳となっており、西洋では満21歳や20歳とする国があるが、日本人のように寿命が短いところでは20歳が適当だろうと述べている。また、同博士は著書の中で、諸外国の成人年齢はおおむね21歳~25歳だが、日本人は世間的知識が非常に発達しているので、20歳が妥当だろうと述べており、精神的成熟の早さも理由に挙げている。むしろ当時は、「20歳」は成人年齢としては早い年齢として捉えられていたことが分かる。

「年齢20歳をもって、成年とする」と定めている現行の民法は明治29 (1896) 年に制定されたものだが、そもそも成人年齢を「20歳」としたのは更にその20年前、明治9 (1876) 年の「太政官布告第41号」から始まっている。同布告で「自今満弐拾年ヲ以テ丁年ト相定候」 (今後、満20歳で一人前に成長した年齢と定める) とされたのが、その後明治23 (1890) 年の旧民法(※2)から現行民法に引き継がれ、約140年を経た現在まで連綿と引き継がれてきたことになる。
そしてこの約140年の間に、日本人の寿命や諸外国の成人年齢といった成人年齢をとりまく状況は大きく変化している。確かに、旧民法制定当時の日本人の平均寿命は約43歳 (男性42.8歳、女性44.3歳) であり(※3)、他国と比較すると短いといえた。しかし2016年の日本人の平均寿命は、男女共に80歳以上 (男性80.98歳、女性87.14歳) であり、世界トップクラスである(※4)。旧民法制定当時と比較すると実に約1.8倍に延びており、日本はもはや世界でも有数の長寿国となっている。
他方で、2008年の時点での諸外国についての調査資料(※5)をみると、私法上の成人年齢は16歳~21歳のレンジにあり、旧民法制定当時と比べて成人年齢の水準も引き下げられている。その中でも「18歳」とする国が最も多く、「20歳」はもはや成人年齢としては若いとはいえない。逆に日本と同じく20歳とする国は、タイ・韓国・モロッコ・ニュージーランドの4ヵ国のみで、この当時調査対象国では少数派であったことが分かる。このうち、韓国では2013年に成人年齢が引き下げられて満19歳とされており、現在では20歳とする国は更に少なくなっているかもしれない。

もっとも、成人年齢を引き下げる場合に考えなければならないのは、権利と義務は表裏一体であるということである。少年法や未成年者飲酒禁止法など未成年者を保護する法律についてはその趣旨や影響に照らして検討する必要があり、特に消費者被害のおそれの観点からは、ニュージーランドのように契約ができる年齢を成人年齢と別にすることも考えられる。
選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられてから初の国政選挙となった2016年7月の第24回参議院議員選挙では、10代の投票率が46.78% (18歳は51.28%) と若年層の他世代 (20代35.60%、30代44.24%) と比べると高い投票率を記録し(※6)、話題となった。選挙権を行使する中で、18歳・19歳の成人としての意識も高まっていくと思われるものの、約140年続いてきた「成人=20歳」の意識を変えていくのは容易ではない。成人年齢を例えば18歳に引き下げること自体には賛成できるが、施行までには十分な周知期間を置き、「成人=18歳」の意識を浸透させていくことが必須といえるだろう。


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