2017年10月(※1)、厚生年金の保険料率の「最後の引上げ」が行われる。
厚生年金の保険料率の引上げは2004年に行われた年金制度改革によって予めスケジュールされていたもので、2004年4月時点で、13.58% (労使合計。従業員負担分はこの半分) だった保険料率は、毎年10月(※2)に原則0.354%ずつ(※3)引上げられてきた。2017年10月に最後の引上げによって、保険料率は18.3%となり、この14年間の累計で4.72%ポイントにも及ぶ保険料率の引上げが完了する。
2004年の年金制度改革の時点では、保険料率の引上げは今回で完了し、「100年安心」の年金制度ができあがるはずだった。しかし、予定通り保険料率が引上げられてきたにもかかわらず、現実には年金の将来の持続可能性は当時の想定より揺らいできている。
これは、2004年当時の年金制度改革のもう一つの柱であった「財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み (マクロ経済スライド) 」が十分に機能していないためである。マクロ経済スライドは、年金支給額を実質的に切り下げていく措置だが、名目の支給額をなるべく減らさないようにするために、「物価が上がったときに年金支給額を増やさない」ことによって実質的な引下げを図るしくみとしていた。年率1~2%程度の物価上昇が続いていればマクロ経済スライドは問題なく機能したはずだが、2004年以来物価上昇率はゼロ近傍に留まり、実際にマクロ経済スライドを実施できたのはこれまで、消費税率を引上げた後の2015年度の一度きりだ。
2004年の年金改革時の理念は、年金支給額を実質的に切り下げていくことで、保険料率は際限なく上げずに上限を示すという「痛み分け」を行うものであったはず。今回が厚生年金保険料率の「最後の引上げ」になることを望みたい。
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